私は「見えてくる」のは、「カラーで天然色で、見えてこなければいかん」と、こう言うのです。――『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』より

創業当時、若干27歳。コネも資金力もない若者が会社を立ち上げ、軌道に乗せることがいかに大変なことか。それを成し遂げることができた理由として、稲盛さんは「仕事を好きになる努力をした」「潜在意識に透徹するほどの強い願望を心に抱いた」ことを挙げています。


仕事をしているとつい、自分を「ロボット」のように考えてしまうことはありませんか?

「会社の歯車として働く」という言葉がある通り、誰かの命令によって機械的に動くのが仕事をするということ。自分の好き嫌いなんて関係ない。そんな風に割り切ることは、仕事に対するもどかしさや落胆・怒りなどを感じなくて済むというメリットもあるかもしれません。

しかし結局、私たちはロボットにはなりきれないのです。自分の心と仕事がしっくりリンクしてないと、次第に胸の内にモヤモヤが広がり、むなしくてたまらなくなってしまうでしょう。

目の前の仕事を「自分の好き」にひきつける努力をする。「自分はどうしたいのか」を色つきの映像のようにありありと思い描けるほど考え抜く。この「自分の燃やし方」によって、自分に「熱」と「魂」を注入しなければ! と目が覚める思いでした。

熱を伝える―分かってもらえるまで、あきらめない


京セラの創業メンバー、稲盛さんをライバルとしていたという経営者、JAL再生プロジェクトの当事者、稲盛さんが立ち上げた「京都賞」受賞者……。稲盛和夫さんの熱を注入された13人が、それぞれが見た・感じた「稲盛和夫」を語っています。

よく見せようとか、カッコいいことを言おうとか、そんなことはまったくなくて、本当に自分の本性みたいなものをさらけ出して、誠実に話される。だから人の心に響くんだと思いました。――『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』より

FC今治の代表取締役社長をつとめる岡田武史さんはそう振り返ります。岡田さんがサッカー日本代表監督だった頃から稲盛さんとお付き合いがあり、稲盛さんが主宰する盛和塾にも参加していた「経営の弟子」でもあった岡田さん。

経営は、経営者一人でできるものではない。社員や取引先に「自分たちの仕事で成し遂げたいこと」を熱く伝えなければならない、というのが稲盛さんの徹底した考えでした。仕事をしながら伝えるのはもちろん、コンパや研修・経営塾のような場をとても大切にされていて、自分の言葉で精魂込めてメッセージを伝え続けていたことが、13人のインタビューからひしひしと伝わってきます。

チームで仕事をしていると、誰かに仕事をお願いしたり分担したりという場面がたくさんあります。慣れてくるとついつい、「これお願いします」「いつもの感じでよろしく」などとビジネスライクになってしまいませんか? それでいて、相手の仕事へのテンションが低かったり、出来上がってきたものに雑さを感じたりするとイライラ。そんな小さなストレスが、職場の空気を少しずつ濁らせていくのではないでしょうか。

「君はこれを担当してくれ」「はい、わかりました」こんな表面的なやりとりでは全然ダメで、ひとつひとつの仕事がどんな未来につながっているか、その人がその仕事を担当する意味は何か……そういったストーリーを、情熱をもって忍耐強く説明する。その愚直な取組みの積み重ねが、京セラやKDDIを飛躍的に成長させ、JAL再生につながったのです。

せっかく働くなら、生きるなら、「熱くなれ」。


稲盛さんの「力いっぱい燃えて生きたらどうだい?」というメッセージを、この本を通して受け取りました。この本は、「経営の神様」と呼ばれ、後進の育成に力を注いできた稲盛さんの最後のプレゼントなのかもしれません。

『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』
編著:稲盛ライブラリー+講談社 「稲盛和夫プロジェクト」共同チーム
定価:本体2090円(税込)
講談社

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最高の経営者であり、魂の求道者・稲盛和夫の人生における、情熱の瞬間。その瞬間を共有した人だけが知るエピソードの数々が、心を熱くする!

稲盛の経営哲学に“情熱”は絶対に欠かせないもの。自分の仕事に燃えるような情熱を持って取り組むことで、仕事だけでなく人生までも輝くことを、稲盛はその言葉と行動で人々に伝えてきた。本書では、稲盛の思想をあらためて紐解きながら、その熱い瞬間が切り取られた写真も紹介。また、その瞬間に立ち会った者、稲盛の熱に直に触れた者たちが、心震わせた経験を語り尽くす。

インタビュー:日本電産会長 永守重信、KDDI社長 髙橋 誠、京都大学 iPS細胞研究所 名誉所長 山中伸弥、FC今治会長 岡田武史、京セラ元会長 伊藤謙介、JAL元副会長 藤田直志、他、共に闘った部下たち、合併先の社員、長年の秘書など、13名の貴重な語り下ろしインタビューを掲載。

読めば心が奮い立ち、自分の仕事に夢中になれる。
よき人生を送りたくなる。


文 /梅津奏

 


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