転職エージェントのミッションと、傷つく相談者とのすれ違い

 

――転職する際、まず転職エージェントに相談する人が多いと思います。しかしそこでは「(ちゃんとした職歴がない人は)やりたくない仕事をやる気がないなら支援できない」とよく言われました。格差のある現状に迎合していくキャリア支援しか受けられないことに疑問を感じたのですが、なぜそういった支援が多いのでしょうか。

 

下村英雄さん(以下、下村) 私の本でも伝えている「社会正義のキャリア支援」というのは、元々不利益を被っている対象層へのキャリア支援という側面が強いので、求職者が「生計を立てられるようにする」「お金を稼げるようにする」というのは、当然ながら重要な目標のひとつとして掲げています。ですから、もしかするとヒオカさんが相談した転職エージェントも、「とにかく仕事に就いて、クライアント(求職者)が生計を立てられるようになるということ」を重視したのかなとも思います。

――生計を立てられるように、まず仕事に就くことを最優先する、というのもキャリア支援として重要なこと――。今までは疑問しかりありませんでしたが、なるほど、それはそうですよね。

下村 自立した生活ができるということは「就職する」ということなので、キャリアカウンセラーの一番の腕の見せどころなんです。ただ、確実な就職よりも「やりたい仕事を追求したい」という方が相談に来た時に、「それじゃあサービスを受けられません」というのはどうかと思います。もし、クライアントがあくまでやりたい仕事に就きたいという意向であれば、そのモードでいきましょう、と転職エージェント側も切り替えをして、支援してあげることもできると思います。

――もちろん、転職エージェントは求職者を企業に紹介することで報酬を得ていくことも重要ですよね。そのためか、私の時は「営業職」と「エンジニア職」の需要割合が高いので、そこに応募するように誘導される感じでした。求職者の人生として最適だからではなく、求人が多い職種に応募してもらうことで、エージェント側が成約率を上げていきたい。そんな意図を感じたんです。今手元にある仕事の中から、面接が組みやすい、斡旋しやすい仕事を勧められるという感じです。

下村 おっしゃっていることはよくわかります。過去にキャリアコンサルティングの支援を受けた方への調査でも、転職エージェントに対して「自分のことを品物として見ている感じがする」「右から左に動かそうとしているだけで、いいようにあしらわれている感じがした」という声は残念ながら多いです。

でも、今は良質なエージェントも増えており、専門的なキャリアカウンセリングのサービスを用意していて、親身になって話を聞いてくれると思います。そうではなかったんですね?