ただしひよこ豆は大豆の倍ぐらい大きいのがネック。日本から来た友人に食べてみてもらったところ「確かに納豆の味だけど。食べ出がすごい!」と爆笑されてしまいました。しかしその後はめでたく、パリで唯一と言っていい大豆の取扱店を友人から教えてもらったので、大手を振って(?)納豆作りを続けています。

納豆は毎回沢山仕込み、小分けにして冷凍保存。解凍した納豆は、トマトと合わせてトマト納豆にしたり、お味噌汁に入れたり、もちろん納豆ご飯にしたりと、とにかく何にでも使います。

納豆の次に作ったのは、ひよこ豆のお味噌。ひよこ豆は大豆よりも甘みがあるため、でき上がるお味噌もマイルドで美味しい。今では我が家の定番お味噌となりました。他にも、米麴とアプリコットで梅干しならぬ杏干し、杏干しを作る際にできる赤紫蘇漬けを干したゆかりなども毎年作るように。去年はシェフのお友達に新生姜がフランスで手に入ることを教えてもらったので、杏干しを作った際にできた杏酢に漬け込み、紅生姜も作りました。

 

そして日本人的には新鮮なお魚、特にお刺身が定期的に食べたくなるものです。これもオペラ座周辺のお店などで取り扱いがありますが、やはりお値段お高め。マルシェで買うお魚を自分で捌くことに慣れた頃、ものは試しだと、そのままお刺身にして食べてみたら......お腹も壊さないし、美味しい! これに味をしめて、帆立貝などの貝も自分で開けてお刺身にするように。すぐに食べない場合は昆布締めや漬けにするなどの知恵もつけました。

以前ホテル・リッツの料理教室に行った際、ホタテ貝は開けるのが意外と簡単と知りました。それ以来、ホタテのお刺身もよく食べるように。(撮影/井筒さん)

ハーブと同様、少量ずつ使う薬味的な野菜も高価で手に入りにくいので、ベランダで栽培しています。紫蘇は毎年、緑の紫蘇を2〜3鉢と赤紫蘇を1鉢。三つ葉も1鉢育てています。紫蘇は一年中栽培できないかと、何度も室内栽培を試してみたもののイマイチうまくいかず......。その代わりといってはなんですが、去年は穂紫蘇の塩漬けを作ったので、新しい芽が出るまではこれを少しずつ食べるつもりです。

毎年作っている、アプリコットを使ったなんちゃって梅干し。赤紫蘇を育てるようになって、より赤く梅干しっぽい色で漬けられるようになりました。(撮影/井筒さん)

一昨年は念願だった茗荷の苗を手に入れ、去年の夏、数個の茗荷が収穫できて感激しました。そしてフランスの胡瓜は大味で水っぽいなあといつも思っているので、今年は日本の胡瓜を育てて収穫しようと企んでいます。......こうして書いてみると、私の和食への執着がすごい感じですけれど。ひとつ言えることとしては、パリ暮らしのおかげで、万が一無人島に漂着してもしばらくは生きていけそうなサバイバル能力が身についたかな? ということです。


*この連載は今回が最終回となります。今までご愛読ありがとうございました!
井筒さんの新連載はただいま準備中ですので、楽しみにお待ちくださいね。

撮影/Yas