各国の中央銀行はリーマンショック以降、大量のマネーを市場に供給する大規模緩和策を続けてきました。ところが マネーをバラ撒きすぎた弊害が大きくなり、日本を除く各国の中央銀行は、金利を引き上げ、市場に供給したマネーを回収する政策を進めています。

一方の日本は、先進国では唯一大規模緩和策を継続しており、引き続き市場に大量のマネーを供給しています。米国は市場からお金を回収してお金の量を減らす政策を行っており、日本は逆に市場にお金を供給し、お金の量を増やす政策を行っていると解釈してよいでしょう。

ドルの量は減って価値が上昇し、円の量は増えて価値が下がるため、日本とアメリカの金融政策が変わらない限り、ドルが高く、円が安くなりやすい環境が続くことになります。これが昨年から続いているドル高・円安の最大要因であり、先ほどの説明で言うところの「大きな流れ」ということになります。

昨年は一気に円安が進み、一時は1ドル=150円を突破しました。米国では金利の引き上げがあまりにも急激だったことから、景気が悪くなるのではないかという懸念が台頭し、一部から金融の引き締めをやめるべきとの意見が出てきました。

もし米国の中央銀行が引き締めをやめれば、これはドル安要因となりますから、1ドル=150円を突破した後は、逆にドルが売られ、円高が進んでいたのです。しかし米国と日本の中央銀行の政策は何も変わっていませんから、これは先ほどの例で言うところの「個別要因」と考えた方が自然でしょう。

4月28日に行われた金融政策決定会合の後、会見に臨む植田日銀総裁。金融緩和策を継続する方針が示された。写真:ロイター/アフロ

米国の中央銀行は、多少の混乱があっても金利の引き上げを継続するとの見方が強くなり、日本でも4月に新しく就任した日銀の植田総裁が、当面は大規模緩和策を継続するとの方針を明確にしました。米国は金融引き締めを継続し、日本はマネーのバラ撒きを継続することがハッキリしたわけですから、もともと想定されていた「大きな流れ」がまだ続くとの解釈が成立します。結果として、多くの投資家がドルを買う動きを強め、これが直近の円安の主要因となっています。

 

今後も、個別要因で円高に戻すケースは出てくると思いますが、日本とアメリカの金融政策が変更されない限り、円安が進みやすいという状況に変わりはありません。

 

 

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