貶めるだけでなく、褒めるのもマナー違反?


人の容姿を貶めてはいけないことは万人共通の理解だと思いますが、人の容姿を褒めていいのかダメなのか、は意見が分かれるのではないでしょうか。褒めようがけなそうが、そもそも人の容姿に触れてはいけない、という意見もよく目にするようになりました。それ自体がマナー違反という認識です。

確かに、容姿に触れられること自体ストレスになり得るし、他人からはいいと思われていても、自分にとってはコンプレックス、なんてこともあると思います。

一方で、自分で変えられない部分に触れるのはよくない、という理屈も聞きますが、それには疑問を持つこともあります。見た目は、多少自分で変えられるけど、ほとんどは生まれ持ったものでできていると思います。でも、それは見た目でなくても、身体能力、学力、声などもそうではないでしょうか。

 

正解じゃなく、「これはどうなの?」を考えるきかっけに


確かに努力で変わるものですが、生まれ持ったものがかなりの割合を占めます。そう思うと、「頭がいいんですね」「いい声をしていますね」というのは良いけど、見た目を褒めるのはダメ、という線引きが正直よくわかりません。実際、見た目を褒められて嬉しいという人もいるでしょう。

なんて考え出すと、深い沼にはまっていきます。ルッキズムについて盛んに発信されるようになり、様々な意見を目にするようになりましたが、こうして考えてみると、答えが簡単に出ない問いばかりです。

『ブスなんて言わないで』は、自分が考えずにスルーしていた部分をあぶりだしてくれるような漫画です。登場人物一人ひとりの考えが絶対的に正しいわけでもなく、間違っているわけでもなく。これが正しい、というのではなく、ひたすら「これはどうなの?」と疑問を投げかけかけてくるのです。

見た目問題で悩んでいる人も、ルッキズムについてはこれまでに思案したことがあるという人も、一度は読んでほしい作品です。


文/ヒオカ
構成/金澤英恵

 

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