恋人をギリギリのところで……


ここではアンドリューの後悔が昇華されるエピソードを一つご紹介しましょう。アンドリューは彼が主役のスパイダーマンの映画の中では病気の治療に失敗して怪物になってしまった親友からニューヨークを守る戦いに身を投じていました。

そして、グウェンという恋人がいました。グウェンはアメリカ人女性らしく勇敢な方です。ただ、アンドリューは戦いにグウェンをそれに巻き込みたくはありません。このことで悩み続けていました。特にグウェンのイギリスへ留学が決まってからは、自分と一緒にいることでグウェンが幸せにはならない…⋯と考え距離を置きました。

しかし、グウェンはニューヨークを守るアンドリューを見捨てられず、ニューヨークを守るアンドリューを助けに来ます。そして、二人の活躍でニューヨークは守られました。ただ、怪物になったアンドリューの親友はグウェンを時計塔の頂上から突き落としてしまいました。

アンドリューは怪物化した親友にダメージを与えて動きを封じ、落下するグウェンを追いかけつかみ取りました。間一髪で恋人を救ったかと思いきや……、なんと、グウェンは頭部を地面に打ち付けており即死してしまいました。そう、アンドリューは行動の優先順位を間違えてしまったのです。そして、恋人をギリギリのところで助けられなかったという後悔を背負ってしまいました。

『ノー・ウェイ・ホーム』では、トム・ホランド版スパイダーマンの恋人MJが突き落とされるというシーンが描かれます。まさにアンドリューの後悔を再現するかのようなシーンです。そして、このシーンに居合わせたのがアンドリューでした。アンドリューはこのシーンで必死にMJを助けます。そう、後悔がアンドリューを必死にさせたのです。そして、自身の分身であるトムスパイダーの恋人を守ったのです。

 


「成仏させない物語」は、迷いをなくすもの


成仏させていないから、すぐにその物語に戻れるのです。だから、とっさに適切な行動ができるのです。

あなたの中にも「成仏させない物語」はありませんか? 思い出すと、胸が切なくなったり、腹立たしくなったり、複雑な思いになるのかもしれません。概ね後悔に伴う複雑な思いは「不快」なものです。実際、心理学の研究では後悔はあらゆるメンタルヘルスのリスクを高める可能性も示唆されています。

でも、この複雑な思いがあることが大事なのです。ですが、そのおかげで私たちはいざという場面で迷わずに行動できるのです。


心に無駄はありません。「成仏させない物語」も不快な思いも、それがあるから次のチャンスで迷いなく正しい行いができるのです。


仮にあなたの中に「成仏させない物語」があったとしたら、その物語はどのようなチャンスで、あなたにどのようなアクションを起こさせようとしているのか探ってみるのも良いかもしれませんね。そうすると、きっとあなたは迷いなく正しい行いを積み重ねられることでしょう。

ところで、私のカウンセリング/コンサルティングには、そのためにおいでになる方もたくさんいます。そして、みんな「成仏しない」ではなく、「成仏させない」意味を発見して、清々しいお顔になられます。そんな、体験があなたにもあるといいですね。さあ、あなたの物語を整えましょう!!
 

文/杉山崇
イラスト/池田マイ

 

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