「人と人とを引き離す」のは「怒り」。では「人と人を結びつける感情」とは

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――本書に「人と人と引き離す感情」は「怒り」だと書いてあるのが印象的でした。最近、SNSやニュースを見ていると「怒り」を抱く人が多くなっている気がします。逆に「人と人を結びつける感情」とはどういうものなのでしょうか。

岸見:元々「怒り」の感情を使うのが得意だった人が多かっただけです。コロナ禍になってより怒りをぶつける人が増えたというだけで、コロナ禍が怒りを引き起こしたのではありません。
対人関係に関心を持つ機会が増え、前から怒りの感情を使う人がより怒りを使うシーンを目にすることが多くなっただけではないでしょうか。

 

「人と人とを結びつける感情」はアドラーがはっきり言っているのですが、「喜び」です。そして、「笑いは喜びの要石」であると言われるくらい、「笑い」というのは最も重要なものです。

認知症の父が、ある時、ヒヨドリが椿の花の蜜を吸おうとしてホバリング、羽をバタバタさせて空中に留まっているのを見て、大きな声で笑いました。その様子を妻と見た時、私は一つに結びつき、過去も未来もなく今ここに生きていると感じました。

職場で機嫌が悪い人はいますね。皆が腫れ物に触るように接するような人です。
家で何か嫌なことがあってそれを職場に引きずっているのかもしれませんが、周りは嫌な感じになります。上司が不機嫌だと本当に困ります。
そんな人のために、自分の毎日をつまらないものにしてはいけません。

そういう人がいたら、自分はいつも機嫌良く過ごそう、いつも喜びに満ち溢れた人生にしてみようと思ってみてください。すると一人一人との繋がりが必ず近くなります。

機嫌が悪い人は普通にしていたら誰にも注目してもらえないと思い込んでいます。だから、気を遣って注目すればするほど不機嫌になります。そういう人なんだと思って、関わらないでおくのも一つの生き方です。

――コロナウイルスのように外的な要因で、自分が予測してなかったことが起きた時の考え方を教えていただきたいです。

岸見:一つ目は、予測していなかったことは起きるものだと思うことです。むしろ起きない方が不自然です。

二つ目は、そのような不測の事態というのは、人生の、あるいは生きることの喜びであると感じることです。
将来まで何が起こるか全部わかってるような人生はつまらないと思いませんか。もちろん、不測の事態のために傷ついたり、死んだりしては困るのですが。
人生は思いもかけないことが起こる、思い通りにいかないことがあるからこそ生きがいがあるのです。