妻を「母親」属性に縛りつけたくない

 

――パパ頭さんが育児漫画を描き続ける中で、改めて感じていることはどんなことですか?

パパ頭 育児って、特に子どもが小さいうちは精神的にも、時間的にも、経済的にも子ども中心の生活になります。そういう生活の中で、自分がどんどん「父親」属性になっていく感覚が湧いてきたんです。社会的にも「ににくん・ととくんのお父さん」として扱われますし。ただ、一生を「父親」として生きていくわけでもない。いや、「父親」の一部は残るけれど、「大部分を占める状態」で一生を終えるわけではないはずです。

そう考えると、妻も育児中だからといって「母親」一色にしてしまうのは、彼女の選択肢を狭めてしまうというか、ある種の不自由さで縛ることになる気がするので、それは避けたいなと考えるようになりました。

 

――「妻のプロ」たる夫として、逡巡している様子が漫画でも描かれていますよね。

パパ頭 大前提として、僕と結婚したことによって、妻に幸せになってもらいたいんです。「幸せになる」って具体的にどういうこと? と考えたら、「豊かな人生を送ってもらう」ことじゃないかと。豊かな人生って? と考えたら、それはきっと「選択肢の多い人生」だと感じました。僕と出会ってしまったから「これしか選択できない」じゃなくて、僕と出会うことによってAもBもCもDもEも選べる人生を送ってもらいたいんです。

――結婚すると女性は「これしか選んじゃだめかな?」と選択肢を狭めがちかもしれません。子どもが生まれると余計に、そう考えてしまうかもしれないですね。

 

パパ頭 母親だから「Aしか選べない」ではなく、母親、イラストレーター、ゲーマー、なんでも構わないですけど、いろんな属性の中から「自分でこれを選んだ」という状況をできるだけ作りたいと考えています。具体的に僕にどこまでできるかわかりませんが、子どもたちが独り立ちした後も「私の手元には何もなくなってしまった」とは絶対に思わせたくないんですね。まずは、子どもたちはもちろん、妻にも最高の夏休みを過ごしてもらって、「次の夏休みが待ち遠しい〜!」って思ってもらうことが今の僕のミッションです!

「愛してる」はどれだけ伝えても「消費しきれない言葉」


――奥様への溢れんばかりの愛を感じます! パパ頭さんは、奥様に対して「愛してる」という言葉を漫画の中でも何度も伝えていらっしゃいますよね。

パパ頭 いい大人がちょっと恥ずかしいんですけど、「愛してる」は割とよく言う方だと思います。僕があまりに言いすぎるもんだから、妻はもはや「OK。よくわかった」みたいな感じです(笑)。

 

パパ頭 でも、「愛してる」という言葉って、使えば使うほど精度が上がるんです。頭の中で、「自分は今『愛している』って言ったけれど、『愛する』って具体的にどうすることだっけ?」という点検ができるので、育児やパートナーシップの現状を整理してアップデートする機会にもなり得ると思っています。「愛してる」は軽くない言葉ですし、むしろ本質的な言葉なのですが、僕が妻と子どもたちと過ごす中で感じるのは、どれだけ口に出しても「消費しきれない言葉」だなぁ、ということです。

『パパが育休とってみたら妻子への愛が深まった話』
著者:パパ頭 KADOKAWA 1210円(税込)

Twitterで大反響を呼んだパパの育休&育児漫画が大幅な描き下ろしを加えて書籍化! 高校教師のパパ頭さんが2回の育休を経験して気づいた育児の大変さ、そして楽しさとは? 新生児育児に奮闘するパパ頭さんと妻が、いかにしてその背中を預け合ったのか、育休明けも続く育児においてパパとしてやるべきことは何なのか――。温かい眼差しで、日常の些細なことも掬い上げます。育休を検討しているパパにはもちろん、夫婦が“バディ”を組むためのヒントが満載!


取材・文/金澤英恵