「片頭痛」発生のメカニズムとは? 新しい発見による新薬開発も


山田:片頭痛が発生するメカニズムは未知な部分も多いのですが、年月とともに、様々なことがわかってきています。私の学生時代は、脳の血管がギュッと縮み血行不良を起こすことで、目の前が真っ暗になる「閃輝暗点(せんきあんてん)」という症状が片頭痛の前兆として起こる、と言われていました。そして、縮んだ血管が広がる時に痛みが起こる、と説明されていたのです。ただ、今ではこの説は否定されています。

編集:えー! そうなのですね! 

 

山田:最新の研究では、どうやら片頭痛の前兆の原因として、「皮質拡延性抑制(ひしつかくえんせいよくせい)」という現象が起こっている、と言われています。

編集:ひし……難しい言葉ですね……。

山田:「脳が一時的に興奮状態となり、その後しばらく活動が抑制される現象」と言えば、イメージしやすいかもしれません。

編集:なるほど! それなら理解できそうです!

山田:その活動の抑制が起こると、片頭痛の前兆である「閃輝暗点」のような症状が起こる、と言われています。その先の痛みはどのように起こるかと言えば、現在は「三叉神経(さんさしんけい)」の炎症が原因なのではないか、と考えられています。この炎症により様々な物質が放出されるのですが、その中の一つである「CGRP(Calcitonin gene-related peptide)」と呼ばれる物質が血管を広げる働きをしており、片頭痛の痛みと関係しているらしい、ということがわかってきているんです。

編集:……つまり、まとめると、脳が一時的に興奮状態になり、抑制されるという現象(皮質拡延性抑制)が起こる。すると三叉神経に炎症が起こり、炎症によってCGRPが放出され、そのCGRPのせいで血管が広がり頭痛が起こっている……という理解でよろしいでしょうか?!

山田:そうですね、もう少し実際には複雑だと思いますが主なポイントは抑えられていると思います。そしてこのメカニズムがわかってきたおかげで、このCGRPの働きを妨げる新薬が開発されているんです。細かい神経や物質の名前は忘れていただいてよいので(笑)、新しいメカニズムがわかると、新しい治療薬が開発されたり、治療の選択肢が増える、ということがご理解いただければよいかと思います。

ちなみに、片頭痛を起こすトリガーは多く知られていますが、最も多いものが何かご存知ですか?

編集:えっと……個人的には飲酒かな?と思いますが……。