障がい者のスペシャルな力で「農福連携」の実現へ

 

——先ほど、お母さん雇用のお話をお聞きしましたが、AGRIKOでは企業の障がい者雇用支援もされているんですよね。どういったきっかけで始めたのでしょうか。

小林 元々高齢者の多い農村でお手伝いしていたので、高齢者福祉という意味でも、高齢者でも無理なく続けられるバリアフリーな農業ができないか? と考えていました。「農福連携」(※)という取り組みに出会い、興味を持って、農林水産省の「農福連携技術支援者」という資格を取得するために受講したんです。そこでGifted(障がい者)の方々に出会いました。

※「農福連携」とは……障害者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組み。農福連携に取り組むことで、障害者等の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性もある。(参照:農林水産省HP)

小林 みなさんが、実際に農業されている姿を拝見して、私よりも全然できることが多いと感じました。水戸納豆の藁を持って量っている様子を見たんですが、水戸納豆の藁の重さなんて、機械で量っていると思っていたんです。藁ってすごく繊細で、なかなか機械だと難しいそうで。それを人の手でやっていて、重さはほとんど同じに作れるそうです。そういう彼らのスペシャルな特性というのを、きちっと生かせるような仕組み作りをしたいな思いました。AGRIKO FARMでは知的障害、精神障害の方、ダウン症の方も働いています。

 

「企業の従業員」として働く、障がい者雇用


——具体的に、どのような形で雇用されているのでしょうか?

小林 現在、従業員が一定数以上の規模の企業では、2.3%障がい者雇用しなければならない義務があります。その際、企業がどのように障がい者の方たちを雇用すれば活躍の場が作れるのか、また企業としてもメリットになるか、というところを一緒に考えてシステムを構築し、農園を活用して会社のSDGs活動や社会貢献活動、社会課題の解決などをサポートしています。

今は、天然水の製造や宅配事業をメインで行う「プレミアムウォーターホールディングスグループ」に雇用されている障がい者のみなさんが働いてくださっているのですが、障がい者の方たちは企業の従業員として雇用されるので、安定して働くことができます。

社会課題と言われているダイバーシティ&インクルージョンもそうですけど、いまやSDGsは企業が必ず取り組まなければいけない課題ですよね。そんな中、社会全体を見渡すとなかなかうまく回ってないという印象を受けます。企業の方からも、「何をやったらいいですかね?」という質問をよくいただくんです。「農福連携」は、その一つの道筋になると思っています。