米国に観光目的で渡航する場合、ビザなしで90日間の滞在が可能です。それ以上滞在すると不法滞在になってしまいますから、必ず90日以内に戻らなければなりません。ところが日本に戻った後、あまり時間を置かずに米国に行き、期限が切れる前に日本に戻るという行為を繰り返していると、不法就労を疑われる可能性が高くなります。
ハワイが大好きで、何度も往復している人は多いですから、単純に入出国を繰り返すだけで不法就労が疑われるわけではありません。しかし滞在先がはっきりしない場所であったり、十分な経済力を有していないのに、年に何度もハワイと日本を行き来しているといった場合、審査は確実に厳しくなります。
わざわざ政府が呼び込まないと外国人労働者を集められない日本とは異なり、米国で働きたいと考える人は世界中に無数に存在しますから、入国審査が厳しくなるのは当然といえば当然です。
米国は2001年に発生した同時多発テロをきっかけに入国審査を厳しくするようになり、ビザなし渡航であるにもかかわらず事前申請を求めるESTAも、その延長線上で出来た制度といえます。しかし筆者の感覚では、米国に限らず、ここ10年の間に状況がさらに悪化しているように思えます。
以前の国際社会は、テロなどの事件があっても、基本的には多くの人を迎え入れた方がよいとのスタンスでした。しかし近年、各国で経済ナショナリズムが叫ばれるようになり、自国の利益にならない人は受け入れる必要はない、という主張が強くなっています。
東南アジアでも、タイのような国は、積極的に外国人を受け入れ、それを成長のエンジンとしてきました。しかし、あまりにも大量の外国人がやってくるため、国内の一部から反発の声が出ており、タイ政府は従来の方針を変えようとしています。
現在、タイには多くの日本人が住んでいますが、ビザなしで入国し、期限が切れる直前に第三国に出国して戻ってくるなど、事実上、長期滞在している人も少なくありません。以前はお目こぼしされていたものの、最近はこうした入出国が認められないケースが増えており、多くの人が帰国を余儀なくされています。
自国第一主義は、全世界的な潮流となりつつありますから、以前とは少し価値観を変えておく必要があると筆者は考えます。
あまりガチガチに考えてしまうとすぎると、せっかくの旅行もつまらなくなりますが、日本から外国に行き、そこから第三国に出国する、何度も出入国を繰り返す、予定が定まらない状態で渡航するといった行為は、可能な限り避けた方がよいでしょう。
先方からすると、観光客というのはこういうタイプの人だというパターンがありますから、そこに当てはまらない場合、どうしても疑いの目がかかりやすくなります。本来、そうしたことはあってはならないのですが、望まない人を入国させたくないという先方の意図も理解できますから、可能な限り「何をしているのかよくわからない人」というイメージを持たれないようにした方が良いのではないでしょうか。
前回記事「【大阪IRの無断使用問題】デザインや情報への「形のないものはタダ」という感覚が、日本をさらに貧しくする」はこちら>>
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