Take it easy
「ただいま! おおい、絵里、電話でろよ、午後何回もかけたんだぞ!?」
夕飯の支度をしていると、彬が息を切らせて帰ってきた。
「ああ、ごめん……。疲れて、シャワー浴びてからうとうとしてた」
「なんだよ~それならよかった。今日、例の料理会だろ? どうだった?」
「んー、まあまあ、かな」
昨日あんなふうに忠告された手前、「友達になってもらえると思っていったらマルチ商法だった」なんて言うのはきまりが悪い。夕飯づくりに集中するふりをして、はぐらかした。
「そっか……。まああれだ、ほんとにさ、無理してもいいことないと思うぞ。そのうち、そのうち。全部自分で何とかしようと思わないで、たまには人生の意外性に期待してみな」
彬は「風呂、入る~」とのんきにバスルームに入っていく。
私は何も言っていないのに……何かを察したのかな?
ふうむ。確かにね。
不意に肩の力が抜けた気がして、ふーっと息をつく。シチュー鍋に蓋をしてから、エプロンを外した。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ぷしゅっとふたを開けて、ごくごくとそのまま飲んでみる。
お行儀が悪いけれど、そういう日もある。そうそう、人生、ちょっとうまくいかないときもあるんだ、多分。
私は少し自由な気持ちになって、ついでにソファに転がって目を閉じてみた。明日に期待して、今日はのんびり休むのだ。
海外出張で、スーツケースを取り違えて……?
秋の夜長、怖いシーンを覗いてみましょう…。
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構成/山本理沙
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