『みなしょー』は大変オタクに優しいので、湊さんとシンのアクスタも販売してくれている。しかも、それぞれ単独で買ってももちろん可愛いのだけど、ペアで買うと2人が仲良くお手手をつないでいるように見えるという全オタクの寿命を縮めにかかっている仕様。発想が天才かよ。どうかこのアイデアを思いついた人の冬のボーナスを2倍にしてあげてほしい。

あまりに可愛すぎて部屋に大事に飾っていたのだけど、お手手をつないだ湊さんとシンが「僕たちを連れて行ってくれないの……?」と訴えるように、こちらを見ていた。

「アンタを忘れるなんて、俺はバカだ……!」

僕は、急いで梱包用のプチプチを引っ張り出し、2人が傷つかないように丁寧に包んだ上、そっとリュックに忍ばせた。かくして男1人+可愛いアクスタ2人の温泉旅行が始まったのである。

 

もうね、これは全人類に声を大にして伝えたいのだけど、アクスタと行く聖地巡礼の旅は最ッッッッッ高に楽しい。40年生きてきたけれど、こんなに楽しいことがこの世にまだ残されていたのだと感動すら覚えた。なにせただアクスタがそこにいるだけで街の景色が一変するのである。

まず湯河原駅に着いて、駅舎の「湯河原」の文字をバックに、湊さんとシンのツーショットを撮る。なんということでしょう。それだけで、あの湊さんとシンがこの世に存在しているような臨場感が。物語と現実の壁を突き破る力がアクスタにはある。四神天地書から鬼宿が飛び出してきたときの美朱の気持ちはこうだったのね……と四半世紀遅れで理解した。

バスに乗ってからも楽しい。窓際の席を確保し、そっと窓枠に2人を並べてみる。なんということでしょう。もう完全に湊さんとシンと一緒に旅行をしている気分である。正直、こうなってくるともはや僕の存在が邪魔でしかない。どうして2人の温泉旅行に自分が相席させてもらっているのか。身の程知らずにも程がある。

チェックインまで時間があるので、それまでにドラマに出てきたスポットをひと通り網羅する。こんなときにサブスクは大変便利である。スマホで8話を再生しながら、ドラマの構図とそっくりそのまま同じアングルで写真を撮れる。もうちょっと左……? いや、もうちょっと煽りで撮ったらいいのか……? と、あれこれ試行錯誤しているだけで、まあ楽しい。

しかし、困難もある。上手に2人の手が重なるように撮らないと、お手手をつないでいるように見えない。しかし、僕の手は2本しかないのだ。左手にアクスタ、右手にスマホを構えると、文字通り手一杯。なんとか右手の人差し指でシャッターボタンを押そうとすると、バランスが崩れて湊さんとシンの手が離れてしまう。あまりにも難易度が高すぎて、人生で初めて3本目の腕がほしいと思った。天津飯みたいに腕が4本になったら簡単にシャッターを切れるのに!