岸田氏に対する増税メガネという揶揄が一定程度、許容されている現状を考えると、日本は民主主義の国と見なすことができますが、一方で、政治家に対する揶揄や風刺が流行りやすいという点では、日本の政治はあまり民主的ではないと言えるかもしれません。

もっとも日本の場合、人によって対応が違うというチグハグな面もあります。

かつて故・安倍首相の顔の特徴を強調して書いた記事のイラストが無礼であるとして、ニュースのコメント欄に批判が集まるという出来事がありました。岸田氏の揶揄については、マナー違反であるという指摘は出ているものの、「ケシカラン」など、立場の高い人に対して無礼であるとの批判が出ていないことを考えると、人物によって対応が違うようにも見受けられます。

社会的に政治家に対する揶揄は一定程度、許容するという合意が出来上がっているのであれば、それはそれで良いことかもしれませんが、人物によって対応が違うというのはあってはならないことでしょう。

筆者自身は、日本は民主国家である以上、政治家は一般人ではありませんから、多少の揶揄は受け入れる覚悟が必要であると考える一方、揶揄する側にも一定のマナーが必要と考えています。

イラスト:Shutterstock

筆者は公人ではありませんが、テレビ番組に出演して意見を述べたり、媒体でコラムを書いていますから、世の中から相応の批判があることは覚悟しています。しかしネットを中心に、犯罪レベルの誹謗中傷が無数に存在するのも事実であり、一部の政治家に対しては見るに堪えない誹謗中傷が行われています。いくら政治家だからといって無制限に揶揄してよいわけではありません。

 

臨時国会では立憲民主党の長妻政調会長が、岸田氏に対して「増税メガネという言葉について気になるか?」という質問をしていましたが、長妻氏は「まあ私もメガネなんでね」という形で質問を納めており、バランスの取れたやり取りとなっていました。

いくら政治家と一般人は違うとはいえ、物事には限度があります。政治家に対する揶揄や風刺というのは一定の範囲内で行われるというのが正しい姿と言えるでしょう。

 

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