「私の考えは少し違って」と伝える勇気

 

羽生:「1人2回までの暗黙ルール、やめませんか?」って、川良さんだったら言える?

川良:いやあ、言えないですね(笑)。

 


羽生:私も難しいなぁ。だから、外国の方の子育てって、やっぱり刺激になるのかもしれませんね。子どもが通っていた学校の前を自転車で通りがかったとき、ちょうど体育の時間だったみたいで。アジア系の男の子が、体格もがっちりした体育の先生に、「それはおかしいでしょ、先生!」って、自分の手をバンバン叩いて抗議していたんです。それを見ていた他の子たちも、「なんかすげえな……」みたいな反応で。

でも抗議の後、先生とその子が「ガハハ!」って一緒に笑ったんです。言いたいことを言って、先生もちろん受け止めていたようでした。先生に対して物申せる子が学年に1人でもいると、同調圧力がちょっと薄まりますね。ちなみに私はそのとき、柵の隙間から『家政婦は見た!』みたいな感じで眺めていました(笑)。

川良:羽生さん……(笑)。でも、勇気を持って「それは違うんないんじゃないかな」「私はそうは思わない」と言葉にすることが大切ですよね。私も、同じ価値観を分かち合っていると思っていた人と、ふとした会話の中で、ジェンダーやハラスメントに対する意識が違うことに気づかされたことが何度かあります。こういうとき、「私の考えは少し違って」と伝えるのはすごく勇気が要ります。

羽生:でも、お伝えするんですか?

川良:すごく「感じよく」伝えるように努めます。文脈って、同じものを共有していると思い込んでいたけれど、実はみんなそれぞれに感じ方も捉え方も違うとわかったので。

 

羽生:わかります。事業を始めるときも、みんなの考えがぴったり揃うことなんて絶対にないから、言葉にして、細かく伝えるようにしています。イギリスの作家、マシュー・サイドの『多様性の科学』という本がとても興味深くて。この本では、異なる属性で構成されたグループと、同じ属性で構成されたグループを対象に、様々なことを検証しているのですが、その中に有名なエピソードがあるんです。