2023年は上場企業41社が早期・希望退職者を募集


東京商工リサーチによると、2023年に早期・希望退職者を募集した上場企業は41社(前年38社)で、前年を3社上回りました。全体の対象人数は3161人で、黒字企業が半数を超えています。

2000年に統計を開始して以来、リーマン・ショックや3.11、コロナの影響など波はありますが、早期・希望退職者の募集は常にどこかしらの企業で行われていて、2023年は情報通信やアパレル関連、医薬品が目立ちました。

 

早期退職と希望退職の違い


早期退職と希望退職は一見似たように見える制度ですが、いくつか違いがあります。

「早期退職」は、定年より早く自主的に退職をする社員に対し、会社側が退職金上乗せや再就職サポートなどの優遇措置を設けている制度。自主退職扱いになるため、約2カ月間は失業保険を受給できません。そのため、当面の生活費を確保しておく必要があります。

一方「希望退職」は、会社が経営不振や今後のリスクに備え、期間限定で早期退職者を募る制度で、会社都合退職として扱われます。早期退職と同じように、退職金の上乗せや再就職サポートが実施されます。

なお、希望退職と混同されやすいものに「リストラ」があります。希望退職が会社の都合を理由に退職者を募る制度であるのに対し、リストラは会社側の都合を理由に解雇する制度です。


早期退職が年金に与える影響

相談者の美和子さんは、早期退職したくても、年金がどうなるのか気になるとおっしゃっていました。結論から言うと、早期退職→完全リタイアのケースでは、年金は減ってしまいます。

日本の公的年金は、2階建ての構造になっています。1階部分は、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する「国民年金」。2階部分はプラスαの上乗せ年金で、会社員や公務員の方は「厚生年金」が上乗せされます。

自営業やフリーランスの方は、「国民年金基金」に加入することで、会社員や公務員と同様に公的年金を2階建てにできます。掛け金を納めた期間に応じて国民年金が上乗せされる仕組みで、原則65歳到達以後の支給となります。掛け金も社会保険料控除の対象なので、所得税と住民税の軽減にもつながります。

話を戻しますが、会社を早期退職すると、年金には次の3つの影響があります。

①老齢厚生年金の支給額が減る会社員や公務員の方が受け取る老齢厚生年金の額は、年金をもらい始めるまでの平均給料と加入月数によって決まります。仮に定年より5年早く退職すると、加入月数が60カ月減ってしまうので、再就職しなければ年金は減額されてしまいます。

毎年1回自宅に送られてくるねんきん定期便の裏面には、「老齢年金の種類と見込み額(年額)」が記載されています。この見込み額は、現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定して計算されているもの。早期退職で加入条件が変われば、当然この金額も変わります。

②配偶者の国民年金保険料の支払いが発生配偶者を扶養に入れていた場合(第3号被保険者)、退職によって配偶者は第1号被保険者となり、配偶者の国民年金保険料を支払う必要が出てきます。支払えない場合は免除を受けることもできますが、配偶者の年金もそれにつられて減ってしまいます。

③加給年金がもらえなくなる可能性も年金の中にはもう1つ、老齢厚生年金における扶養手当のようなもの=加給年金があります。要件に当てはまった場合、自身が65歳から、配偶者が65歳になるまで受け取れますが、そのためには原則として厚生年金に20年(240ヵ月)以上加入している必要があります。早期退職によって厚生年金の加入月数が20年を下回ると、加給年金をもらえなくなる可能性があります。

死ぬ瞬間の5つの後悔

筆者の職場では、バリバリ働いて仕事人間だった男性や、育児と家庭を両立しながら仕事を続けてきた女性など、ある程度仕事に対して満足感のある人が、「自分や家族のためにこれからの時間を使いたい」と早期退職を決断するケースが多々あります。早期退職のメリットの1つに、お金では買えない「時間」が確保できるという点があるからでしょうか。

オーストラリアで緩和ケアの介護を長年つとめ、多くの患者を看取ったブロニー・ウェアという方がいます。その方の著書『死ぬ瞬間の5つの後悔』には、次の5つの後悔が挙げられていました。

 

いかがでしょうか。ミモレ世代も人生のバランスを考える時期であるかもしれません。私は2つ目の「働きすぎなければ良かった」という後悔にハッとさせられました。

最後に、アーリーリタイア(FIRE)の4%ルールというものを聞いたことがありますか? 4%ルールとは、年間生活費の25倍の資産を生み出せば、年利4%の投資運用益で生活費をまかなえるというアーリーリタイア成功の指標です。

時代背景や国の違いによって、このルールがすべての人に当てはまるというわけではありませんが、退職金や年金のことも考慮しながら自分の人生と向き合い、早期退職も選択肢の1つと捉えても良いのかもしれません。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

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