どんでん返しの前振り…であってほしい!

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もう、1話の時点で「昭和は自由でよかった」「コンプラや多様性の令和はしんどい」という方向に持っていくような意図を強く感じましたが、時代の変化を茶化すような描き方はきっと何かの前振りで、「やっぱコンプラ、多様性に気を使わないといけなくて息苦しいよねー」なんてぼやく人たちの意表を付くような展開になるはずだ、いや、なって欲しい。というかならないと取り返しがつかない。そう筆者も思いますし、それを期待する声も大きいです。しかし、制作陣のコメントを見てみると……。

*脚本・宮藤官九郎さんのコメントより
思春期に『夕やけニャンニャン』と『毎度おさわがせします』と『ビートたけしのオールナイトニッポン』で倫理観を設定され、不適切に不適切を塗り重ねて生きてきた世代にとって、日々アップデートを強いられる令和はなかなか生きづらい。「昔は良かった」なんて口が裂けても言いたくない。昭和もそこそこ生きづらかったし、戻りたいとは思わないけど、あの頃の価値観を「古い」の一言で全否定されるのは癪なんです。
(中略)
市川森一先生がご存命だったら、こんなタイトルを付けたんじゃないでしょうか。
『正しいのはお前だけじゃない』
自分と違う価値観を認めてこその多様性。
第1話を読んだ関係者から「スカッとした」「痛快です」「溜飲が下がった」などの感想を頂きましたので、おそらくそんな肌触りのドラマになると思います。

               ——『不適切にもほどがある!』公式HPより

*プロデュース・磯山 晶さんのコメントより
「昭和から来たおっさん」が、自分の発言のリフレクションを恐れず、傍若無人に意見を言うことで、令和の人々が「今はそんなこと言っちゃダメなんだよ!」と呆れながらも「でもそれってちょっと真理ついてるかも」と考えるきっかけになるような物語を作りたいと思って企画しました。
               ——『不適切にもほどがある!』公式HPより

このコメントを読むと、やっぱり、昭和の暴論も一利あり、みたいに思わせたい意図があるんだな、と感じます。

ドラマの描き方に批判が上がるたび、どんでん返しにつながる前振りだから! と擁護する声も聞こえましたが、今までのコンプラなどをさんざん茶化す演出が前振りではなく、本来の意図通りなら、本当にその名の通りただただ不適切にもほどがある! なドラマということになりますが、どうなんでしょう……?

でも、脚本を務める宮藤官九郎さんは、次のようにも発言しています。

いろんなことがダメって言われるようになった。ドラマのサブタイトルも毎回『◯◯しちゃダメですか』なんです。ダメって言葉で終わりにして、なんでダメなのか考えなくなってきていると実感した。1話のサブタイトルが『頑張れって言っちゃダメですか』なんですが、『頑張れ』としか言われてこなかった我々が『なんでダメなの?』と問いかけすることで、考えるドラマにしたい。
——ENCOUNT 宮藤官九郎、新ドラマで令和時代のコンプラに“問題提起”「なんでダメなのか考えなくなっている」より

今後の展開で、なぜコンプラ重視などの時代の変化が必要なのか? をみんなで考えられるような展開があるといいな、と思います。前半の、コンプラ茶化しまくりで「令和はコンプラがんじがらめでしんどい」層を沸かせた展開はその前振りだったんだ! となったら……なんて淡い期待を抱きつつ、今後の展開を楽しみにしています。次回は、もう一つのドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』を見て感じたことについて書きたいと思います。


文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 

 

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