好きだという気持ちと、好きでは超えられない思いと


音楽を好きという気持ちが、上手い下手を気にすることやさまざまな事情に勝る場面が多いところも、この作品の魅力のひとつです。晴見フィルにはプロとして仕事していた夏目、蓮、瑠李(新木優子)がいる一方、ほとんどの人はアマチュア。はじめはメンバーのミスが許せなかった蓮も、夏目のアイデアでトランペットの大輝(宮沢氷魚)と二人で演奏したのをきっかけに晴見フィルのメンバーと一緒にやっていく気持ちが芽生えます。

夏目はメンバーの上手い下手ではなく、一人ひとりの良さを見ています。例えば自分は下手だと落ち込む大輝のトランペットを「君のトランペットには優しい歌心がある。歌うトランペットには誰も叶いません」と褒めたのには涙が出そうでした。どんな人にもその人なりの魅力が誰しもあるということを教えてくれます。


音楽を楽しむシーンは、オーケストラだけではありません。トランペットの大輝(宮沢氷魚)の祖父・二朗(西田敏行)が営む“うたカフェ”ではお客さんがリクエストした曲を演奏したり歌ったりできます。みんなとにかく楽しそう。音楽に限らず、上手いか下手かどうかなんて関係なく、心が動いたものを大切にするのが幸せなのではないかとあらためて感じました。

一方で、響や弟の海(大西利空)は、圧倒的な音楽の天才・夏目を前に、どんなに頑張ってもこの人のようにはなれない、という気持ちも感じていました。才能で勝負する世界だからこその厳しさも確かにあるのです。でも、厳しい面も描きつつも、この作品がより伝えたいのは、心のままに音楽を楽しむことだと思います。

 


音楽は人の心を救ってくれる


6話で、オーディオルーム常連のおばあちゃん・富子(白石加代子)の「亡き夫が好きだった曲をもう一度聴きたい」という願いを叶えるため、響がひそかに探した第6楽章。やっと見つかった曲を聴けたとき、彼女が「また会えた」と笑顔になったシーンは、音楽の持つ力を表していました。ほかにも、さまざまな人物の人生にある”音楽”を感じさせてくれるエピソードがたくさん出てきます。

音楽のかけがえのなさに気づかせてくれ、自分の好きな音楽にまた触れたいと思わせてくれるこの作品。引き続き、どんな物語を見せてくれるのか楽しみです。

文/ぐみ
構成/山﨑 恵
 

 

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