和菓子屋さんは外観で判断せず、気になったらチャレンジしてみて

――お店の見た目だけでは判断しにくいと。

畑さん:そうなんですよ。「こういう感じの店だとおいしいよ」といったものもなく。うーん、結構難しいですね。なので、まずはお店の外観にひるまず、気になったお店を見つけたらまずはチャレンジしてもらいたいんです。

――旅行に行った時にはお城の近くを散策してみて、見つけたお店の外観がちょっと古びていても、チャレンジして買ってみるというのがいいんでしょうかね。

畑さん:そうですね。あと、ぱっと見だと敷居が高くて入りづらいというパターンもあると思うんですよね。暖簾だけがかかっていて、和菓子屋さんなのか、酒屋さんなのか、それとも昆布屋さんやお茶屋さんなのかよくわからないな、というところから始まって、思い切ってその暖簾をくぐってみるかどうするか、と迷って「いや、どんなお店かわからないからやめとこう」みたいにためらってしまう。これって特に若い世代だと多いと思うんです。
でも、そこはアドベンチャーだと思ってチャレンジしてもらいたいなと思いますね。

ふらりと街歩きをしていると和菓子屋さんを見つける

逆に、「このお店はもう商いをやめちゃったんじゃないのかな」と思うようなボロボロのお店でも実は営業してて、おばあちゃんが一人で美味しい和菓子を作っているお店だというパターンもあります。そういうお店って、店舗の環境を整える体力も気力もないからボロボロなだけで、味は確かだ、ということもあるので。

だから、いろんなお店にチャレンジしてもらいたいですね。お店の外観だけで、そこのお菓子が美味しいかどうかというのはわからないので。

――外観で判断せず、気になったお店には思い切って入ってみてほしい、ということですね。もしかするとそのお店のお菓子がすごく自分好みかもしれないですし。

畑さん:和菓子の好みって本当に人それぞれで、流行やトレンドってないんです。なので、私はあまり美味しくないとかおすすめできないとかっていう否定的なことは一切書かないようにしているんです。

このアカウントは高島屋の公式ですけれど、高島屋に関わらず、高島屋で扱っていないお菓子もどんどん紹介するし、他の百貨店で売っているお菓子も紹介しています。

それは、どんな人が、どこのチャンネルに引っかかって、どのお菓子を楽しんでくれるかはわからないので。その一つが高島屋であったり、別のお店の和菓子イベントであったり、旅行で行った先で見つけたお菓子だったりと、自分の好みの和菓子を見つけるとっかかりになったらいいなと思って、百貨店の公式という立場に収まらず、広い視野でいつも更新しています。

みなさんには私のSNSアカウントからいろいろリサーチしていただきながら、ご自身の気になるお菓子を売っているお店に実際に足を運んで行っていただきたいなとも思います。

 

和菓子にはそれぞれの土地に根付いた魅力がある

――最後に、畑さんが思う和菓子の魅力とはどういうところなのでしょうか。

畑さん:それぞれの土地に根付いた魅力があるところですね。和菓子そのものもそうですし、売っているお店やその土地に出向いた時にも、それぞれの魅力が感じられます。
日本は小さい国ですけれど、47都道府県それぞれ違った特色があって、それが感じられるところが一番和菓子の面白いところかなと思います。

バイヤーという仕事から見えてくるところもあると思うのですが、最近は和菓子屋さんの若旦那・若女将たちとイベントでお客様の目の前に立ってみると、現場の空気感というのは最終的にはその土地やリアルなイベントの空間に行ってこそ楽しめるんだなということを感じます。

自分自身、現地に出向くことが楽しくて、2009年からもう10年以上長いことずっとバイヤーを担当していますが、飽きもせず、各地でいろんな人に出会って、いろんな土地の匂いとその場所の空気を感じて楽しんでいます。

洋菓子だと地域性がそれほど出てこないかなっていうのは正直思います。
もちろん、素晴らしいパティシエさんたちがたくさんいらっしゃるのですが、やはり東京や大阪、名古屋などの大都市圏にお店が集中していることと、パティシエの方々が作ってらっしゃるのは、フランスやドイツなど海外の土地の魅力を表現されているお菓子が多いと思うんです。

和菓子には、日本の土地に根付いた魅力というのが溢れているんです。

実際に足を運んでみると、こんな辺鄙な場所にあるんだというお店を発見した時や、なんでこんな山中の峠道にたくさんのお客さんが車でやってくるんだろう、とびっくりさせられることも多いです。でもそれは、その土地にお店が馴染んでいて必要とされているから、お客さんがたくさん訪れるし、観光に来た方もその評判を聞いて訪れるんです。

日本酒や料理もそうですけれど、その土地に根付いた魅力というものが一番楽しいと感じています。10年以上バイヤーの仕事をしていても、いまだに知らないお菓子がたくさん出てきますし、「この土地の桜餅はこんな作り方をするのか」といった発見がまだまだ出てくるんです。

地域性を感じられるのは和菓子だけではない

――確かに、和菓子というのは日本の各地の地域性とか、その土地ならではの材料や製法がありますよね。

畑さん:あとはやっぱりスペシャリストがたくさん多いところですね。団子一本勝負のお店とか、うちは砂糖菓子しか作っていませんとか、よくそれだけでやっていけているなって思うようなスペシャルなお店もあれば、総合的にあれもこれも作っているけれど、実はご主人が一人で全部作っているといったお店もあります。

そのやり方でずっとここまで生きてきたという部分に魅力を感じます。新しいお店ももちろんたくさん出てきていますけれど、そういうスペシャリストがずっと続けてきたようなお店に私は魅力と面白さを感じていますね。



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次回の「SNSで見つけた『バズり人』さん」もお楽しみに!


構成・文/大槻由実子
編集/坂口彩
 

 

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