2024年改正で先送りになったもの

次の5項目に関しては、提案には上がっていたものの、見送りが決まりました。これらの内容はすべて私たち利用者に直接関係し、介護負担や金銭的にも影響が大きいものなので、安心した人も多いかもしれません。ただ、給付と負担のバランスを考えると、いつまでも先送りにできる内容ではありません。

① 要介護1・2の総合事業への移行
要介護1と2を介護保険の介護給付サービスから切り離し、市町村の総合事業に移行する案がありました。しかし利用者や業界団体の反発によって断念。移行によるサービスの低下や介護サービス事業所の撤退も危惧されていました。

② ケアプランの有料化
現在、ケアマネジャーが作成する介護サービス計画書(ケアプラン)は無料ですが、有料化の案が出ていました。こちらも公平中立性の観点から見送りとなりました。

今回は、以上の2つは見送られましたが、引き続き次回の制度改正に向けて検討を行うようです。

③ 2割自己負担の対象者拡大
1割負担に該当する方の基準を見直し、2割負担の割合を増やす案がありました。しかし経済的な事情から世論の反対も多く、先延ばしが繰り返されています。

④ 通所介護事業所による訪問サービスの提供
在宅介護を行う方は、現在訪問介護事業所を利用していますが、ホームヘルパーの人手不足の代替になればという狙いから、通所介護(デイサービス)事業所などの職員が訪問介護も実施するという案が出ました。しかしデイサービスの事業所も人手不足で、余裕がないところも多くあります。また、訪問介護事業所はホームヘルパーの人手不足が進行している上、今回の改正で基本報酬が2〜3%引き下げられることになりました。これでは継続も従業員の獲得もさらに困難になりそうで、在宅介護に大きな影響が出そうです。

⑤ 訪問介護・居宅介護支援への科学的介護の推進
介護業界には、介護サービス事業所からデータを収集し、サービスや利用者のあらゆる情報を集約した「LIFE(ライフ)」というデータベースがあります。このシステムを訪問型サービスで活用する、事業所へのLIFE加算検討案が見送りとなりました。データをケアに活かす段階にはまだ来ていないようです。

 

先送りになったこれらの案に関しては、決定すると家計に直接影響してきます。今回はひとまず安心ですが、次回以降に決定となる可能性も高いのです。

元気だから介護保険のお世話にはならないと思っていても、いつ何が起こるかわかりません。この介護保険改正を自分事として捉え、適度な貯蓄を意識してみてはいかがでしょうか。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

前回記事「どうする?高齢家族の住まい問題、サ高住からURまで安心の見守りつき賃貸を一挙公開!」>>