留女ちゃんは今でこそ、ふわふわの茶色い長毛の持ち主ですが、保護された時はボロボロのフェルトのようでした。口からよだれが出て、食べることもままならないのか衰弱し切っていて、推定年齢は10歳以上。もうこれ以上、外での生活は耐えられないから看取りを視野に入れて保護しようということになりました。なんとか保護できたのは年の瀬のこと。

保護され、動物病院で毛を刈った直後の留女。カットした毛玉はものすごい量!

ろくに食事が取れないことから、すべての歯を抜くことも考えていたのですが、動物病院で確認したら既に歯はなくなっていました。それだけでも、いかに過酷な暮らしをしていたかが伺えます。絡まって大きな毛玉になった毛をカットし、シャンプーしてから一時的に入院し、無事退院できた大晦日に「預かり」さん宅に連れていきました。幸いなことに猫エイズや白血病は陰性で、腎臓の数値も悪くはありませんでした。

「預かり」さん宅で警戒していた留女ちゃんですが、ご飯を与えると一気に完食し、暖かい寝床で夜を過ごすことができました。ところが元日の朝、空っぽになった猫トイレでうずくまっていました。ここの猫トイレはおからの砂を使っていたのですが、ご飯と勘違いした留女ちゃんは猫砂もすべて食べ、ツチノコみたいにパンパンな姿になっていたのです。普段、ろくに食事にありつくことができなかったため、食べられる時に食べておかなくてはという本能が働いたのでしょう。
 

 


留女ちゃんはこのシェルターに来てからは、だいたい人目につかない箱や猫ハウスの中で過ごしています。ほとんど姿を現しませんが、毎日ここで掃除やご飯を用意している私がいる時に、出てきてくれることはあります。でも、すぐにシャーシャーいって隠れてしまいますが……。私もそんな留女ちゃんを見ていて、この子は実はひょうきんなんじゃないかと思えてきました。ちゅ〜るを食べながらシャーシャーいってて、「どっちよ!?」とツッコミ入れたくなる時があったり、夏に丸刈りをした時のシュールな姿が面白かったりと、過ごす時間が長くなればなるほど、留女ちゃんの味わい深さがにじみ出てくるのです。

穏やかな表情を見せる留女

一度だけ、「亡くなった猫に似ているから」というご夫婦のもとにトライアルに行ったことがあるのですが、そのお宅の先住猫との相性が合わず、戻ってきてしまいました。以来、留女ちゃんはずっとここで暮らしています。

留女ちゃんの約3ヵ月後にシェルターに来た古奈禰ちゃんも、シャーシャー猫です。彼女の場合は警戒しているというより、ものすごく臆病なのだと思います。古奈禰ちゃんの特徴は、なんといっても見た目がかわいいこと! ネコバスみたいな顔をしていて、全体的に丸みを帯びていて、短足で尻尾が短いのもチャームポイントです。まんまるな目がいつもウルウルしていて、ずっと見ていても飽きません。ちゅ〜るは食べてくれますが、基本的にはずっと隠れています。ただ、お気に入りの猫ベッドにいる時だけは、なぜか触っても怒りません。古奈禰ちゃんも推定10歳以上ですが、健康状態は良好です。

野良猫時代の古奈禰(写真右端)。三毛猫の母猫とその子猫3匹と行動を共にしていた。母猫は警戒心が強いはずなのに、なぜ古奈禰が寄り添っても平気だったのかは謎のまま

留女ちゃんも、古奈禰ちゃんも、ずっと隠れていて、そこを覗き込んだだけでシャーシャーいってきます。ほぼ触れませんし、抱っこなんてとんでもない状態です。でも、他の猫たちと喧嘩することなく、適度な距離感で共同生活を続けられていますし、ずっと二匹を見続けていると、彼女たちにもいいところがいっぱいあるのに気づき、ますます愛らしさが増しています。