ソフトバンクとヤフーが提供するスマホ決済サービス「PayPay」が100億円還元キャンペーンを実施するなど、QRコードを使った決済が大きな話題となっています。ライバルのLINEもみずほ銀行と組んで銀行業への参入を発表するなど、QRコードを使った電子マネーが急激に普及しそうな勢いです。

しかしながら、今、話題となっているのは100億円還元キャンペーンを使っていかにトクするのかということばかりで、QRコード決済を使うことによって、実際のところ、どんなメリットがあるのかという点についてはあまり注目されていません。今回のコラムでは、QRコード決済のメリット、デメリットについて考えてみたいと思います。

 

PayPayはアプリを使った決済サービスですから、スマホにアプリをダウンロードして使います。あらかじめお金をPayPayのアプリにチャージしておき、残高の範囲内で決済するやり方と、クレジットカードを登録し、都度カード経由でお金を引き落とすやり方の2種類があります。
クレジットカードを使って残高をチャージすることも可能ですが、一部のカードにしか対応していませんから、基本的には銀行口座からチャージするか、クレジットカードを登録するのかのどちらかと考えてよいでしょう。

店頭での具体的な支払い方法としては、店舗が提示するQRコードをアプリで読み取って支払うやり方(スキャン支払い)と、自分自身がバーコードを表示して、店舗側がスキャナーで読み取るやり方(コード支払い)の2つがあります。

どの方式によるのかはお店によって異なりますが、スキャン方式の場合には、スマホのカメラが動作していないと決済できないので注意が必要です。LINEが提供しているLINE Payもコードを表示する方式ですから、支払い方法は似たようなものといってよいでしょう。

クレジットカードや従来型(カード型)電子マネーと比較した場合、財布を出さずに決済できますから、スマホを常に手に持っているタイプの人は、かなり便利に感じると思います。また、画面をロックするといった措置を講じていれば、万が一、スマホを落とした場合でも勝手に決済される可能性は低いと考えられます。カードの場合は、使用停止の手続きを取るまでは不正利用される可能性がありますから、安全性という点ではスマホ決済に軍配が上がるでしょう。

しかしながら、クレジットカードや従来型電子マネーと比較して、PayPayやLINE Payが突出して便利かというと、そこまでではありません。携帯を取り出す作業と財布を取り出す作業にあまり違いがなければ、従来型の決済手段と大きな差は感じない可能性が高いでしょう。
キャンペーンでどれだけトクをするのかという話を除けば、すでにキャッシュレス決済に移行している人が、無理にQRコード決済にするほどの必然性はないと思われます。どのお店がどのサービスに対応しているのかという店舗の対応状況と、自身の生活スタイル(スマホは絶対に手放さないのか、逆に財布だけは絶対に身につけているのかなど)に合わせて、好みの決済手段を選択すればよいでしょう。

今、もっとも決断を迫られているのは、現金派の人だと思います。

日本は先進国の中では突出した現金大国として知られており、街中には多数のATMがあるため、これまで現金の利用で不便を感じることはありませんでした。しかし、フィンテック(金融とITの融合)の進展で、銀行の経営環境悪化が懸念されることから、各行は急ピッチで店舗やATMの数を減らしています。

このため近い将来、キャッシュレスの決済手段を持っていないと逆に不便になるという時代が確実にやってくることになります。クレジットカードや従来型電子マネーに加えて、PayPayやLINE PayがQRコード決済に本格的に乗り出したことで、キャッシュレス化の動きにはさらに拍車がかかると考えられます。

これまで現金派とキャッシュレス派で、どちらがよいのかという論争がありましたが、今後は、どちらが便利かということよりも、キャッシュレスの普及は避けられないので、それを前提に物事を考える方がよいでしょう。

 
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