これに加えて、首都圏の生活環境が変わったことも大きく影響しているでしょう。日本全体の人口は減少傾向が顕著ですが、東京の人口は増加が続いています。鉄道各社は運転本数を増加するといった工夫をしていますが、抜本的に輸送量が増えたわけではありません。工場の跡地などに大規模なタワーマンションが整備され、一気に人口が増えたエリアも多く、駅の混雑にさらに拍車をかけています。

長蛇の列が続く、神奈川県の藤沢駅。こうした光景は首都圏の各駅で見られた。 写真:アフロ
 

対症療法的に何かを変えても、別の形で似たような問題が発生しているという状況であり、根本的に改善しない限り、うまくいかない可能性が高そうです。

では、わたしたちは一連の問題をどう解決すればよいのでしょうか。

筆者は、時代の変化に合わせ、わたしたち自身が、農村型社会から都市型社会へと、基本的な行動様式を変えるしか方法はないと考えます(ここでいうところの農村、都市というのは、実際に住んでいる場所のことではなく、行動様式や価値観のことを指しています。社会学におけるゲマインシャフトとゲゼルシャフトに近い概念と考えてください)。

農村型社会は、多くの人が同じ生活パターンを維持し、あうんの呼吸で集団生活を送ります。一斉に行動することが多く、お互いのことをよく知っており、コミュニケーションは基本的に会話で行われます。

一方、都市型社会は基本的に個人主義で、様々な属性の人が、互いをよく知らない状態でチームを組みます。仕事や責任の範囲を明確にする必要があるため、コミュニケーションは基本的に文書(今の時代はメールやSNS)で行われます。仕事を個人で完結させることが多いので、お互いにあまり干渉しません。

大量生産を基本とする高度成長時代には、農村型社会がうまく機能しましたが、価値観が多様化しているIT時代においては、都市型社会にシフトしないとあらゆることがうまく回らなくなります。農村型から都市型へのシフトは表面的なものでは意味がありません。一人ひとりが、根本的に価値観を変えない限り、状況の改善にはつながらないということを肝に銘じる必要があるでしょう。

先ほど、人口減少社会は都市部への人口集約を伴うと述べましたが、これは自然の摂理であり、こうした動きを人為的に止めることは不可能です。

日本は人口過密と思われていますが、東京都心部の人口密度は、パリやニューヨーク中心部の半分程度しかなく、日本人は実はまだまだ都市型生活に慣れていません。人口が集約された巨大都市で一斉に人が動けば、インフラがパンクするのは当然です。人口が減る日本社会においては、行動様式全般を変えていくことが必須要件なのです。

前回記事「消費増税に五輪特需消滅…新築マンション、本当の「買い時」は」はこちら>>

 
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