「貧血かな?」「鉄分不足じゃない?」というよくある会話。しかし、「貧血とは何ですか?」と改めて聞かれたら正確に答えられる人は多くありません。「貧血」とはどのように診断し、治療するものでしょうか。医師である山田悠史先生が回答します。

 


「貧血で倒れそうになった」は、誤解です。


「貧血で倒れそうになった」というセリフを耳にしますが、ここで言われる「貧血」はおそらく貧血ではありません。例えば、会議中にめまいがした、お風呂から出た後に立ちくらみがした、朝礼で突然倒れてしまった。こんな時、「貧血になった」と言われることがあります。

 

貧血の症状としてめまいや立ちくらみが出ることも確かにあるのですが、多くの場合これらは貧血ではありません。実際には、神経調節性失神や起立性低血圧と呼ばれる現象を見ています。

神経調節性失神というのは、ストレスがかかっている時、強い痛みを感じた時、何か緊張からふと解き放たれた時、排尿後などに起こります。このような状況下では脳へ行く血液の量が減ってしまうことがあり、それに伴って一時的に顔が青ざめたり、冷や汗をかいたりすることがあります。また、それに引き続いて意識を失ってしまったり、目の前が真っ暗になってしまったりすることもあります。

これは、脳への血流の問題であって、「貧血」があるわけではありません。しかし、顔色が悪くなったり青ざめたりするため、「血の気がひく」印象から、世間一般ではよく「貧血」と勘違いされているようです。
 

貧血とはなにか


では、貧血とは何でしょうか。貧血は、血の赤色を作っている「赤血球」が減ってしまった状態のことを意味します。この赤血球には、ヘモグロビンと呼ばれる赤い色素が含まれており、ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶのに重要な役割を果たしています。

病院での血液検査で「貧血がありますね」と言われた場合には、このヘモグロビンの値で説明を受けることになると思います。男性では13g/dl以上、女性では12g/dl以上が正常で、これ未満の場合に「貧血」と診断されることになります(参考1)。皆さんの健康診断結果はいかがでしょうか。もしチャンスがあれば、今年ないし昨年の健康診断の結果を確認してみてください。

このように、「貧血」は血液検査でこそ診断される病気です。症状いかんの病気では必ずしもありません。実際、貧血がゆっくり進んでいる場合、ないし軽症の場合には自覚症状の全くないケースも珍しくありません。

一方、貧血が重くなると、赤血球が減ってしまい、酸素を届ける運び屋が不足するので、結果として酸素不足となり、息切れやだるさ、力が入らないといった症状が引き起こされます。


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