5月に東京が転出超過になった際、逆に転入超過になったのは埼玉や千葉でした。東京だけでなく、岐阜や愛知、広島なども大幅なマイナスになっています。これはコロナによって飲食店の営業や工場の操業に影響が及び、仕事を失う人が増加。家族や親戚などを頼って別の場所に転居した結果である可能性が高いでしょう。

政府の外出自粛要請により閑散とする新宿・歌舞伎町。(写真は4月当時)。写真:StreetVJ / Shutterstock.com

7月以降も東京からの転出と千葉・埼玉への転入数が拮抗する状態が続いていますが、東京圏全体では転入超過ですから、やはり地方から出てくる人が多いという状況に変わりはありません。東京を出た人が千葉と埼玉に行ったとは限りませんが、地方から首都圏に出てきた人と、東京から千葉や埼玉に転居した人の両方が存在すると考えるのが自然です。

 

愛知県は東京と同様、マイナスが続いており、自動者産業を中心に多くの非正規労働者が解雇されたことが想像されます。

愛知と同様、製造業の拠点が多い岐阜や広島もずっと転出超過が続いていますが、仕事を失い、転居を余儀なくされている状況は雇用統計からもうかがえます。10月の就業者数は前年と比較して93万人も減りましたが、失業者は51万人しか増えていません。残りはどこに行ってしまったのでしょうか。

これは統計のマジックで説明することが可能です。

雇用統計のルール上、ハローワークに通うなど、継続的に求職活動をしていないと失業者にはカウントされません。残りの40万人はあまりにも状況が厳しく、職探しを諦めた可能性が高いのです。そうなると頼れるのは家族や親類しかいませんから、やむを得ず故郷に帰った人も多いのではないでしょうか。

確かに一部の企業はテレワークへのシフトで、通勤の必要がなくなっていますが、一方で、夫婦のどちらかが正社員でテレワーク、一方が派遣社員で職場に出勤という世帯は少なくありません。こうした世帯の場合、中心部から遠い家を買うという選択肢はそもそも存在しないでしょう。

社会全体としても、現場への出勤が必要な職種ほど人手不足が深刻で、オフィスワーカーは余剰となっています。今後、人事異動で現場勤務を命じられたり、定年後の再雇用で職種が変わることで、現場への出勤を指示される可能性もありますから、職場から遠い場所に持ち家を購入するのは、少し慎重になった方がよいと思います。

コロナは人々の生活に大きな影響を与えていますが、いつかは終息する時がやってきます。その時になってみないと、今後のライフスタイルがどう変わるのかは分かりませんから、今は様子を見るのがベストではないでしょうか。
 


前回記事「ドコモ新料金プランを価格より「透明性」で評価すべき理由」はこちら>>

 
  • 1
  • 2