チームワークと臨機応変な対応で乗り切ったアーティストへの取材
 

――CAと出版社、あまり近い関係ではないと思いますが、なぜ出版社だったのですか?

元々は人が好きで航空会社に入ったのです。実際に人と会う機会は多いけど、もっと深掘りをしたいなと思いました。出版社で取材をして、魅力ある人々から学び、伝えたいと考えました。それから、もう何より雑誌が好きで、本当にたくさんの雑誌を読んでいたので、出版社の契約社員の募集があった時に応募しました。中途で受ける場合、編集プロダクションに入ってから応募する人も多いようですが、私は入っていませんでした。CAしかやったことがない人をどうして?と反対する声もあったようですが、ありがたいことに女性編集長の方が採用してくださったのです。

――栗尾さんに何か可能性を感じたんでしょうね。その後、他の出版社の雑誌記事やコミックエッセイなどの執筆をされ、色々な方に取材をされていたわけですが、印象に残ったことはありますか?

CAの業務と共通する部分があるのですが、その場でアサインされたメンバーでチームを組み、最善を尽くすのが撮影と取材です。女性誌の記事で某80年代米国人女性スターを取材するためにラグジュアリーなホテルの客室にスタッフが集まったとき「私はポップアーティストなのに、こんなに華美な背景で撮影されたくない」と言われてしまい、全身の血が引きました。30分しか時間がなかったので、もはや移動はできません。「華美じゃないのは……浴室 !!」そう思いつき、ポップスターの方にはなんと、バスタブの中に入って頂きました。いつもタッグを組んでいたフォトグラファーさんには椅子に乗ってもらい、上から撮影してもらうことに。この写真を御本人も気に入ってくださり、安堵しました。 日頃から、そのフォトグラファーの方とは「あの映画いいよね!」と話したり、好きなイメージを共有する間柄だったので、このような急なオファーでも「この感じでいこう!」と、瞬時に同じ方向を向いてエマージェンシー対応ができました。

 

――チームワークとその場で最善を考える対応力、すごいです。仲間との信頼関係が高まりそうですね。

そうなんです。今でもその時代から交流の続く編集者やライターなどの友達が、ピンチには必ず助けてくれます。みんな色々な業界のことを知っている目利きなので、即座に問題解決の手伝いをしてくれるのです。お互いが持つ知識や情報で助けあう感じですね。私自身、これからも友人の役に立てる場面を増やせるように専門分野の知識を磨いていかなければと思っています。

 

――私も困った時とか辛い時は、前向きなアイディアやエピソードをたくさん持っている栗尾さんについ連絡しちゃいます。

こちらこそ!お互い様です。以前から前向きで居続ける方法を模索することが私のライフワークになっています。今、準備をしている「更年期」のエッセイや漫画もその視点で思いつきました。日本の女性には「更年期」にアレルギーがある人が少なくないので、だからこそ取材をする価値があると思っています。