患者が私で0歳の次男が私の付き添い人


抱っこ紐で赤ん坊を背負い、巨大なボストンバッグを肩にかけ、オムツ1袋をもう片方の手に持ち、マンションの住人と出くわさないよう、エレベーターを1台送って表へ出ました。

 

マンションの前には運転席と後部座席をビニールシートで防護した介護タクシーが停まっていました。とっても紳士なドライバーさんが「お加減は大丈夫ですか?」「室温はいかがですか?」とことあるごとに声をかけてくれます。コロナ患者ってもっと忌み嫌われた扱いを受けるのかと思っていたので少しホッとしました。

よく晴れた日曜日のお昼時、街はいつも通り活気があり沢山の家族が笑い合っていました、いつもの我が家のように。でもなんだかガラス窓1枚隔てて眺めるそれはイミテーションのようで、まるで刑務所に輸送される被告が最後に自分が元いた世界を見納めているような、そんな気持ちでした。

30分ほどで病院に到着しました。防護服を着た看護師さんが「大変でしたね」と重い重い私の荷物を持って招き入れてくださいました。元々はERとして使っていたのでしょうか、ドアひとつ入ったところに診察室が設けられ、まず小児科のドクターが次男の診察とPCR検査を行い、続いて感染症科のドクターが私の診察をしてくださいました。

皆、迷惑そうな顔もせず本当に優しく丁寧に接してくださり心から安堵しました。「何か心配なことはありますか?」と聞いてくださったので家に置いてきた双子のことが心配だと伝えると「そうですね。それではお母さんも気持ちが休まらないですね。今日入っていただくお部屋は6人部屋をお母さんと赤ちゃんのおふたりで使っていただくので、場合によってはそこに一緒に入ってもらう調整も出来ると思いますよ」と言ってくださったのです。

この言葉にどれだけ救われたことか……。本当に心がふっと軽くなる一言でした。そして帯同した次男の検査結果を1時間ほど診察室で待ちました。次男がグズリだし、まだかなーまだかなーと思っていたところに「陰性でしたよ!」と先程の先生が伝えにきてくださり、これまたほっと胸を撫で下ろしました。

そしてこの時点で患者が私で0歳の次男が私の付き添い人という形式で入院手続きが進められていきました。可愛い付添人だこと。

諸々終えるまで2時間くらい経過し、いざ病棟へ移動となった時、恐ろしい乗り物が私の目の前に現れました……。先生や看護師さんの応対が優しすぎて忘れかけていた「私はコロナ患者」という現実をまざまざと突きつけてくるその乗り物とは一体……!?


(次回へつづく)
 

構成/露木桃子

 


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