今の自分に必要なのは、台本を読む力

そして、この夏、有澤さんが全力を傾けているのが、8月25日開幕の舞台『息子の証明』。登場人物は、大女優の母とその息子の2人だけ。母と子の埋められない溝を描いた会話劇で、有澤さんは主人公・来栖現実(リアル)を演じます。

有澤さんにとって初めての2人芝居。未知のことを求める有澤さんらしい選択です。

「今回大事なのは、台本を読み解く力。すごく頭を使うんです。バカには役者はできないってよく聞きますけど、本当だなって。台詞の1行1行に考えることがあって、全然休まるところがないんです」

 

いい俳優ほど、台本を読む力がある。装飾のない会話劇だからこそ、台本の真髄にあるものを捉える力が問われてきます。

「国語は得意だったんですけどね(笑)。いざ自分が演じるとなったら全然違います。役に感情移入することはできるんですよ。でもそれだけじゃなくて、なんで今こう言ってるんだろう、なんで今こうしたんだろうということを読み間違えると、意味が変わってしまう。そこを今回はすごく鍛えられています」

おかげで、日常生活のふとした感覚も変わってきているのだとか。

「漫画を読んでいても前までは派手な描写に感動してたのが、今は台詞にグッとくるようになったし、音楽もメロディじゃなくて歌詞をちゃんと聴くようになった。自分が感銘を受ける部分がどんどん変わってきているのを感じています。台本に関しても、ほんの何気ない一言なんだけど、これは本当に伝えたい言葉なのか、それともちょっとカモフラージュして濁している言葉なのかとか、そういうことを考えるのが楽しくなりましたね」