適量の飲酒が心臓の病のリスクを下げる


日本の厚生労働省が出しているガイドラインでは、適度な飲酒として「1日平均、純アルコールで20g程度である」としています(参考文献3)。これはビールなら中瓶1本、7%の缶チューハイだと350ml1缶、日本酒では1合程度に相当します。

ただし、高齢者や女性はアルコールによる臓器の障害を起こしやすいことから、より少ない量が適当と考えられています。

このような「適量」が定められる背景には、心血管疾患リスクや死亡リスクと飲酒量との間に認められる「U字型」の関連性があります(参考文献4)。心臓の病気や死亡のリスクが適量の飲酒をする人で最も少なく見られるような相関が認められているのです。

 
いずれも参考文献4を参考に作成

しかし、これは「適量のお酒を飲むからこそ長生きする」ということとはイコールではありません。例えば、お酒を適量飲む人は、実は食生活に人より気を遣う傾向があり、結果的にそれが長生きにつながっているのかもしれません。

 

一方で、乳がんを例に挙げてみると、ビールで1日コップ1杯を下回るような「時々飲む」程度の飲酒でも、まったく飲まない場合よりも発がんリスクの増加に関連することが報告されています(参考文献5)

参考文献4を参考に作成

このように、飲酒量が増えれば増えるほどリスクが比例して増加する病気も知られています。ですから、乳がんリスクという点では、全く飲まない方がいいのかもしれません。

こうしたことを背景に、「1日平均、純アルコールで20g程度」(女性はその2分の1から3分の2)という「適量」が定められているのです。

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参考文献
1    Rumgay H, Shield K, Charvat H, et al. Global burden of cancer in 2020 attributable to alcohol consumption: a population-based study. Lancet Oncol 2021; 22: 1071–80.
2    Stahre M, Roeber J, Kanny D, Brewer RD, Zhang X. Contribution of excessive alcohol consumption to deaths and years of potential life lost in the United States. Prev Chronic Dis 2014; 11. DOI:10.5888/PCD11.130293.
3    アルコール|厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html (accessed Jan 18, 2022).
4    飲酒のガイドライン | e-ヘルスネット(厚生労働省). https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html (accessed Jan 18, 2022).
5    Bagnardi V, Rota M, Botteri E, et al. Light alcohol drinking and cancer: a meta-analysis. Ann Oncol  Off J Eur Soc Med Oncol 2013; 24: 301–8.


 

構成/中川明紀
写真/shutterstock

 
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