20歳年下の後輩に愕然...なぜそのヘアメイク!?


――え、これは一体……?

結子は24名の訓練生が待機する教室を、廊下側の窓からのぞいて絶句した。

訓練生は、20歳~23歳あたり。20歳ほど年下ということになり、もはや後輩というより娘といったほうがしっくりくるような感覚だ。つまり結子からみたらヒヨっこ、まだまだ学生気分が見て取れる。

何よりも驚いたのは、彼女たちの身だしなみだった。

訓練生はCAの制服を着ることは許されていないから、黒い自前のスーツで訓練所に通う。座学はスーツで受け、ドラマでよく見る脱出訓練などの保安訓練は、ジャンプスーツと呼ばれるつなぎの訓練着で行われる。

しかし、リクルートスーツだろうがつなぎだろうが、ヘアメイクは絶対に行き届いているのはCAたる所以。傍からみたら若干滑稽だろうとも、結子が訓練生の時代には超絶フルメイクにヘアスタイルはシニョンのアップスタイルでつなぎを着ていた。

 

ところがどうだろう、結子が見ていることに気づいていない訓練生たちは、ぺちゃぺちゃとおしゃべりに興じているが、どうにも身だしなみに気合いが足りない。ポニーテールは後れ毛が目立つし、結ぶ位置もどうにもあか抜けない。かと思えば何を勘違いしているのか夜会巻にしてラメの目立つアイシャドウに真っ赤なリップという子もいる。なんというか……どうも少しずつ緊張感と畏れが足りないのだ。

 

――ここひとつ、威厳を示さないとね……!

結子は深呼吸をすると、ドアをノックし、背筋を伸ばして教室に登場した。訓練生たちの視線が集まる。

「おはようございます。皆さんの訓練を担当する、教官の深谷結子です」

新人たちは、さすがにぴりっとした空気になり、背筋をピンとのばした。やはりなんだかんだいって素直で可愛い。結子は威圧するのも良くないと思い、にっこりと微笑んだ。

この子たちを一人前に鍛えていかなければ。サービスの真髄も、愛社精神も、すべてを伝えるためにここに来た。結子は内心、非常な高揚感に包まれていた。

しかし、次の瞬間結子が耳にしたのは、驚くべきセリフだった。