話の流れを決めるステップ:『刑事コロンボ』のレビューを例に


例えば、好きなドラマを紹介したいとします。ドラマの魅力を語り、そのドラマ好きの人には共感を呼び、観てない人にはぜひ観てとおすすめしたい。私は海外ドラマ『刑事コロンボ』シリーズが大好きなので、ミモレで『刑事コロンボ』の魅力を紹介するとしたらを例に解説しますね。

こんな手順で構成を考えます。

1)被写体を決める:その作品の1番の魅力だと思うポイント決める
2)フォーカスを絞る:どこを書くと伝わりやすいかを考える
3)資料集め:2)を起点に作品を見返す、関連作品を探す
4)話の流れを決める:2)を起点に話の流れを作る

具体的に掘り下げます。

1)被写体を決める:その作品の1番の魅力だと思うポイント決める

ドラマ『刑事コロンボ』シリーズの一番の魅力は、名優ピーター・フォーク演じるコロンボ警部に違いありません。でも「主人公の魅力」だとまだ褒める範囲としては広すぎます。コロンボ警部の魅力が爆発しているのは「犯人を油断させながらも、とぼけた質問で核心に迫り犯人を追い詰める」ところだと仮定します。

 

2)フォーカスを絞る:どこを書くと伝わりやすいかを考える

「犯人を油断させながらも、とぼけた質問で核心に迫り犯人を追い詰める」コロンボスタイルが、一番伝わりやすいエピソードはなんだろうと考えます。犯人を追い詰めるシーンは毎回のクライマックスですから、フォーカスポイントとしてはまだ広い。

犯人(と思われる)各回のメインキャラとコロンボ警部の探り合いの会話の中で、毎回のように登場するのが警部の奥さん“ウチのカミさん”です。「ウチのカミさんがファンでね」「ウチのカミさんがダンスをやってるものですから」などと、犯人との共通点を見つける雑談に出されがちです。

「カミさんの話で犯人を油断させながら、核心に迫り追い詰める」シーンにフォーカスポイントを絞ることにします。

3)資料集め:2)を起点に作品を見返す、関連作品を探す

“ウチのカミさん”が引き合いに出されるシーンというポイントで作品を見返してみます。膨大な作業ですが、ここで記憶違いがあると台無しなので、ちゃんと調べ直します。

 

続いて、フォーカスポイントをより際立たせる関連作品がないかと探します。例えば、“ウチのカミさん”ことミセス・コロンボはドラマに一度も登場していません。このように「主人公に語られるだけの奥さん」がキーになる作品は他にあるだろうか。あるいは、『刑事コロンボ』の影響をかなり受けているであろう『古畑任三郎』は、奥さんはいるのか? 独身だった気がするな……と調べていくわけです。

4)話の流れを決める:2)を起点に話の流れを作る

十分な根拠と資料が揃ったら、「カミさんの話で犯人を油断させながら、核心に迫り追い詰める」シーンを起点にして、コロンボ警部の人間的な魅力、他の作品との類似性や影響などに話を展開。コロンボファンも見たことない人も「ぜひこの回のこの“カミさんシーン”を見返して」と締めくくることにします。

 


レビューのパワーは着眼点と執念に現れる


ここまでお付き合いくださった方は薄々感じられたかもしません。レビューのパワーは表現力から生まれるのではないのです。フォーカスポイントを決める着眼点とそれを実証する執念から生まれます。自分の感情の動きや気持ちを書き連ねなくても良いのです。

感情を表現するのが得意な方は、対象への熱い思いを書いてももちろん構いません。私自身はあまり感情を吐露するのが上手ではないので、褒めポイントを一つに絞り、事実を集め(カミさんが出てくる回数を数えたりして)私が面白いと言うより先に「面白そう」と思ってもらうことを目指す手法をとっているのです。

読んでくれた人から「わかる。私は〜〜が好き」「〜〜も良いけど、〜〜のシーンもいいよね」などと他の褒めポイントを紹介してもらえたら、好きのシェアの目的達成です! 1ヵ所褒めて、他の良いところはみんなに委ねる方式、ぜひやってみてください。

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