それからは、「不倫 結末」などと検索しては、本気になり離婚する夫は少数派、という書き込みを見つけては拠り所にした。そう、浮気はしょせん浮気。一定期間が過ぎれば沈静化するはず。邪な恋が盛り上がっている、一番分が悪いところで騒ぎ立てて、離婚することになったら目も当てられない。ほとぼりが冷めるまでは、自分も適当に遊んだり仕事に打ち込んだりしてやりすごそう。

そんな里香に、美容医療は心地よい「沼」だった。キレイになれば慶介が戻ってくるかもしれないという計算もあった。お金を出せば、悩みが解決できることも嬉しかった。お金なんていくらでも払う。だから神様、どうか。

――でも、もうそれも終わりにしなくちゃ。

里香は、ゆっくりと息を吐いた。

 


妻の宣戦布告に、慄いた夫


「慶介ってさ、いつも週末は何してるの?」

土曜日の夜。珍しくリビングでのんびりしている慶介に、里香は背後から話しかけた。

「へ? 何って……なんだよ急に」

「ここ数年、一緒に過ごす時間、減っちゃったなと思って」

慶介は眉をひそめて、里香のほうをみた。日頃全く干渉してこなくなった妻が急に妙なことを言い出したので、当惑しているのだろう。

「何ってさ。ゴルフの打ちっぱなしとか、ゲームとか、フットサルとかだよ。急にどうした?」

「私もね、最近通ってるところがあるのよ」

「そうなの?」

慶介は話が逸れてホッとしたような表情を浮かべる。

「どこに通ってるの?」

「美容クリニック。もう100万円も使っちゃった」

「ひ、ひゃくまん?」

慶介は手にしていたマグカップをがちゃんと置き、里香の顔をまじまじと見る。

「うん、100万円。でも、慶介、気付かなかったでしょ? 100万円かけて少しはマシにしても、さすがに10歳年下の彼女を見慣れてる人には焼け石に水だったよね」

慶介が、小さく息を呑むのがわかった。