「嫁姑問題なんて他人事だと思ってたのに…!?」義母の爆弾発言

 

「おばあちゃん、久しぶりだねえ、元気そうで何よりだよ」

その夜、5人で涼子がなんとか予約したホテル中華で着席すると、長女の由真がニコニコと早苗に話しかけた。中学3年生になり、テニス部に入ってすっかり健康的に日焼けしている。好きなことに打ち込む時間が取れるようにと、頑張って公立の中高一貫校に入った甲斐あり、この夏も思う存分部活に打ち込める予定だ。

 

「元気ですよ、由真ちゃんも、絵美ちゃんも、すっかり大きくなって! 二人ともすらっとした綺麗なお姉さんだわねえ。学校はどう? 同じ学校に通っているのよね?」

相好を崩す早苗に、なぜか娘の受験にはほとんどノータッチだった晃司が得意げに割って入る。

「母さん、東京じゃ公立の中高一貫っていったらちょっとしたもんなんだよ。倍率も高くて、姉妹で一緒に通えるなんてすごいって同僚にも羨ましがられるくらいさ。授業料も私立に比べてぐっと安いし、助かってるよ」

すると早苗は、なぜか眉間にギュッと皺を寄せて、涼子の方を見た。

「神戸だと、お嬢さん学校がたくさんあるせいか、ちょっと気の利いた子は中学から私立に行くことが多いんだけど……広尾や十番あたりの名門女子校は、高校からは入れないのかしら?」

「ええと、おっしゃってるのは、聖心や東洋英和みたいなことですか? お義母さんたら、ああいう学校は代々のお家が通うところですよ~」

すると早苗はますます不満そうな顔をする。

「あら、私も女学館に通っていましたよ。紘子のところも大阪に住んでるけど、私立に入れたのよ。私がそばにいればそういういい学校のこと、もっと二人が小さい頃から教えてあげたんだけど、ああ、涼子さんは北海道の人だからねえ」

――急にそんなこと言われてもねえ……大体今まで嫁が産んだ孫の進学なんて興味ないって顔してたのに、こっちに来るとなった途端、どうした!?

むっとすると右の眉が上がる涼子の癖を知っている晃司は、涼子の顔を見て慌てて話を逸らす。

「それにしても、高輪のマンション、意外に掘り出しものかもしれないな。二人で住むにはちょっと手狭な気もするけど、まあ掃除も楽だしね」

「それがね、もしかして一人暮らしかもしれないわ」

早苗がジャスミン茶を中華ポットから注いでお代わりしながら、さらっと口にした発言に、一同はフリーズした。

「へ? どういうことですか?」

涼子が目をしばたたかせながら尋ねると、早苗はなぜかウキウキを押さえられないといった風に口元に手をやった。

「先週のことなんだけど……お父さんに、嘱託社員で働かないかっていうお声がけがあってね。もともと上京にさほど乗り気だったわけじゃないから、小さなアパートを借りてお父さんはしばらく神戸に残ろうかなっていう話が出てるの。ありがたいことに家賃補助が5万円出るらしくて、それでお給料が出るならば、別居もアリなんじゃないかと思うのよ」