夫の欠点は義母譲りの法則


「あらあら~この家具屋さんもなかなかいいじゃない! 神戸の家では、桐のタンスや一枚板のダイニングテーブルだったけど、東京のマンションなんだからこのくらいのこじんまりした軽い家具がいいわよね」

「そうですよお義母さん、どれでも使いやすくてニトリ最高ですよ~。さあ決めましょう、オフホワイトとアイボリー、どっちにします!? そしてさっさとカーテンコーナーに行きましょう」

結局、週末に早苗の買い物に付き合う羽目になった涼子は、キャッキャとはしゃいでカタログをめくる早苗をどんどん前に進めるべく圧をかけた。1カ月前まではもっと姑の前で猫をかぶって遠慮していた気がするが、そんなことをしていたらあと何日も買い物に付き合うことになるだろう。

 


「涼子さん、せっかちねえ、昔はぼんやりしてたのに。そんなに急がなくても、慌て者は損するわよ」

 

――ぼんやりってなんだっ、損なら今すでにしてるわっ!!

気絶しそうになりつつ、バカバカしくなった涼子は「ちょっとあっちのマッサージチェアにいますね……」と微笑んで立ち去った。朝から2軒目、お腹が減ってきたが、このままレストランに入るのも面倒くさい。ニトリが終わったら今日は解散しようと目論んでいると、早苗が手に商品番号の控えを大量に持ってやってきた。

「さ、これがあればあとは家で採寸して合うかどうか調べられるわ。ああ、お腹ペコペコ、涼子さん、付き合ってくれた御礼にお昼ご馳走するわね! 行きましょ」

「おかーさん、部屋のサイズ図ってこなかったんですかあ……家具買いに来たのに……」

先読みと先手必勝が信条の涼子は、遠い目になる。晃司ののんびり屋は母譲りなのだと確信した。夫の悪いところが義両親由来だと思うと、余計にイライラするから始末が悪い。

「そうですね、じゃあ、お昼行きましょうか」

涼子は力なく頷くと、マッサージチェアからよろよろと立ち上がった。