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金融庁の審議会が、上場企業に対し男女間の賃金格差などについて情報開示することを求める報告書案を了承しました。男女間の賃金格差の背景には、正社員と非正規社員の待遇格差という問題があり、うまく対応できれば、両方の問題を一気に解決できる道筋が見えてきます。

 

日本の男女間賃金格差が諸外国よりも大きいことは、よく知られた事実です。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本における男性賃金の中央値を100とした時の女性の賃金は77.5と低い水準にとどまっており、日本の順位はOECD加盟国中、下から3番目でした。

男女間で賃金格差が大きい理由のひとつとして昇進格差の問題を指摘する声があります。女性は組織内でなかなか昇進できないので、相対的に賃金が高い人の割合が低下することで、全体の賃金が伸び悩むという理屈です。確かに日本企業における女性登用の比率は低く、先ほどの報告書では、女性管理職の比率についても公表することを求めています。

しかしながら、日本の場合、昇進すると給料が劇的に上がるような体系ではありませんから、男女間の昇進格差だけでここまでの賃金格差になるとは考えにくい状況です。女性の登用促進についても、社会全体として進めて行くべきですが、賃金格差についてはまた別の理由が存在している可能性が高いのです。

女性の賃金が圧倒的に低いのは、日本では女性が非正規社員として勤務している割合が高く、正社員と非正規社員との間に大きな賃金格差が存在していることが原因です。

厚生労働省の調査によると、正社員は非正規社員と比較して、約1.5倍の賃金となっており、両者には大きな違いがあることが分かります。また非正規社員として働いている人の割合は圧倒的に女性が多いというのが現状ですから、男女間の賃金格差の正体は、やはり正社員と非正規社員の格差にあると考えるべきでしょう。

出典:平成30年賃金構造基本統計調査の概況|厚生労働省


日本では、子育ては女性がするものという感覚が根強く、出産で退職すると、その後は非正規社員として仕事に復帰するケースがよく見られます。もし正社員と非正規社員に大きな待遇格差が生じていなければ、仕事に復帰した女性の賃金は元に戻るはずですから、男女間でこれほど大きな差にはなりません。

 
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