「自炊」の経済的価値は食費の節約に留まらない

 

つまり、家庭内に節約好きで毎日マメに料理する気概とノウハウを持つ人物(本人か配偶者)がいれば、それだけ食費のコストダウンにつながる可能性が高いということ(有機野菜など食材にこだわれば、逆に食費は天井知らずですが……)。節約したお金を貯金していけば1260万円という「マンションの頭金」に匹敵するほどの金額になります。

「自炊」の経済的価値は食費の節約に留まりません。外食やデリバリー、コンビニ、ファストフード、レトルト、スナック菓子など、手軽に食べられて、おなかがいっぱいになるものばかり長年食べていると、カラダに必要なビタミンやミネラルが不足します。その結果、見た目は標準体形でも、低栄養状態に陥っている可能性があります。

糖尿病といえば中高齢の肥満男性の病気とイメージしがちですが、最近は20〜30代の若い世代のやせ型の女性にも増えているといいます。

 

ゆとりが少ないなら、知恵と工夫で健康を維持しよう


栄養が不足がちになれば、免疫力が低下し、疲れやすい、だるい、めまいなど、体調卜ラブルを引き起こしやすくなり、生活習慣病にもつながります。当然のことながら、医療費が増えますし、本格的に体調を崩せば、仕事ができず収入が減少。そうなった場合、家計に与える影響は、前掲の食費の試算どころでは済まないでしょう。

食生活や生活習慣など健康意識の高さは所得とも深い関係があります。

厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査報告」によると、世帯の所得別(200万円未満、200万円以上400万円未満、400万円以上600万円未満、600万円以上)に食生活や生活習慣に関する状況を調査したところ、所得が低い世帯は、例えば「主食・主菜、副菜を組み合わせたバランスのいい食事の頻度」について「ほとんど毎日」と回答した割合が低い、野菜の摂取量が少ないなどの傾向がみられます。限られた予算では外食でバランスの良い食事をとるのは難しくなりますから、経済的なゆとりの少ない方こそ、自炊で節約と健康維持に努めることが重要になってきます。ゆとりが少ないなら、知恵と工夫で乗り切る努力をということです。

黒田尚子(くろだ・なおこ)さん
CFP®️1級ファイナンシャルプランニング技能士。1969年生まれ。立命館大学法学部卒業後、92年に日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得、98年独立系FPとして転身を図る。現在は、各種セミナーや講演、執筆、個人相談を中心に幅広く行う。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格取得。がんとくらしを考える会・理事、城西国際大学・経営情報学部非常勤講師なども務める。主な著書に『がんとお金の真実(リアル)』『親の介護は9割逃げよ』『病気にかかるお金がわかる本』等、監修書に『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』『おひとりさまのはじめてのエンディングノート』がある。

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構成/金澤英恵

 

 

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