洋の東西を問わず、ロイヤルファミリーのゴシップは昔から人気の話題です。ことにテレビなどの映像メディアが登場して以降は、人々にとっていわば最も馴染みのあるリアリティショーとなりました。一般家庭とは異なる暮らしぶりを覗き見たいという好奇心と、どこの家庭にもあるような家族の問題に対して抱く親近感とがないまぜになった眼差しが注がれ続けています。特権への反感と憧れ、期待と苛立ち。批判と共感。ロイヤルファミリーはさまざまな感情を掻き立てる存在です。

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今、英国のエリザベス女王の死去に伴って、英国王室のメディアの使い方の巧みさに改めて注目が集まっています。BBCニュースで繰り返し流されたのは、女王が25歳の時の戴冠式の映像に加え、14歳の時にラジオで戦時下の子供達に呼びかけた音声や、21歳の時に公務に身を捧げることを宣言したテレビの映像でした。それらを通じて、女王への信頼や親近感を抱いた人がたくさんいたのでしょう。最近では即位70年のお祝いで、女王がCGの熊のパディントンとお茶をする動画が話題になりました。

 

96歳で世を去ったエリザベス女王は死の2日前まで公務を行い、即位から葬儀に至るまでが具にカメラのレンズに捉えられ世界中の人に目撃された、まさにメディア時代を生きた君主でした。世界的な人気を誇ったダイアナ妃の事故死の際に慣例に従ってすぐには弔意を示さなかった女王への批判が殺到したときには、テレビで追悼メッセージを発表。また、ダイアナ妃の棺を運ぶ葬列に向かって女王が頭を下げるという極めて異例の行動がテレビカメラに捉えられ、国民感情に応え王室の信頼回復を果たしました。

今回、女王の死に伴って即位した新国王チャールズ3世も、母を看取ったスコットランドの城からロンドンのバッキンガム宮殿に戻った際に車を降りて人々と触れ合うという異例の行動をとり、その様子が世界中に映像で流されました。不仲が報じられているウィリアム王子夫妻とハリー王子夫妻が連れ立って登場し、沿道に集まった人々と触れ合う様子もニュースになりましたよね。女王の死去という世界中の注目と共感が集まる瞬間を活かして、王室メンバーがどのような形でメディア露出をするのが最も効果的であるかを、英国王室が周到に考えていることが窺われます。