日本の皇室制度は英国王室とは異なるとはいえ、やはりかつての植民地政策や戦争に対する責任を厳しく問う声や、事実上の身分制度であると批判し存続廃止を求める声があります。後継者を男系男子に限る制度が重大な性差別であることも、それによって皇室の存続が困難になっていることも、取り組まねばならない喫緊の課題です。また、皇室制度は事実上の身分制であるという批判がある一方で、皇室に生まれた人々が基本的人権を制限されていることはこれまで不問に付されてきました。法の下の平等の精神に照らせば、今後も従来の形での制度維持が可能であるとは言い難いでしょう。

こうした議論は活発に行われるべきですが、「特権があるのだから、国民の声を聞け」と言って、皇室に生まれた人たちやその家族となる人たちに人格を否定するような侮辱や愚弄の言葉を浴びせたり、虚偽の拡散を正当化したりするのは間違っています。彼ら彼女らの存在に疑問があるなら、個人攻撃ではなく皇室制度の是非を問うのが筋です。英国王室でも対応に苦慮していますが、日本でも現状はもはやゴシップの域を超えてネットいじめと化してしまっています。

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皇室がSNSで活動を可視化し、情報の開示を進めるのは時代の必然かもしれません。存続に関する議論を深めるためにも、直接の情報発信をしないよりはしたほうがいいはずです。ただ、それがネットでの安易な人気取りや暴力の野放しにならないように、制度設計と運用に留意しなければなりません。早ければ1〜2年以内にも発信が始まるかもしれない皇室SNSは、日本の皇室のメディア戦略とネットリテラシーの成熟度を示すものとなるでしょう。ロイヤルアカウントが殺伐としたネットの荒野にならないことを願います。

 

 


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