後期高齢者が陥りがちなフレイルとは


ひとみさんのお父様のように、フレイルの状態にある方は日本人高齢者の8.7%にのぼると東京都健康長寿医療センター研究所が発表しています(2012年に行われた全国高齢者パネル調査の参加者のデータを解析してフレイル割合を算出した結果)。また、近年の調査では、高齢者だけでなく若い世代にもフレイル状態の人がいることがわかってきています。年を取ると、体や認知機能の衰えに目が行きがちですが、フレイルの症状はそれだけではありません。

フレイルとは、加齢とともに心身の活力が低下した状態のこと。通常であれば感じないようなストレスにも弱い状態になっており、その要素は大きく3つに分けられます。

 

これら3つの要素が連鎖することで悪循環が生まれ、要介護状態へのカウントダウンが急速に進みます。特に75歳以上の後期高齢者は、65~74歳の前期高齢者と比べてフレイルの進行が顕著になると言われています。フレイルは健康な状態と要介護状態の中間に位置し、多くの人はこのフレイルの段階を経て、寝たきりなどの要介護状態になってしまいます。

日本医学会連合が2022年4月に発表した「フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言」では、フレイル・ロコモの人はそうでない人と比較して、要介護に至る危険度が約4倍という注意喚起も。

このような状況を鑑み、国は2020年4月から、後期高齢者を対象にした「フレイル健診」を導入しています。後期高齢者の健康診査では、それまでメタボリックシンドローム対策に重きを置いた質問票が使われてきました。ところが高齢期のBMIは少し高めの方がちょうど良いことがわかってきたため、フレイル状態をチェックできる質問票へと切り替わったのです。

 


フレイルのチェック方法


身体的フレイルは、体重減少・筋力低下・疲労感・歩行速度・身体活動の5つの項目からチェックしていきます。3項目以上該当した場合はフレイル、1~2項目該当した場合はプレフレイルと診断されます。

 

また、下記に当てはまるような場合は心が疲れているので要注意です。

・毎日の生活に充実感がない
・今まで楽しく感じていたことが楽しめなくなった 
・自分が役に立つ人間だと思えない
・今まで楽に感じていたことが億劫に感じる 
・わけもなく疲れたような感じがする

より詳しく知りたい方は、東京都健康長寿医療センターが独自に開発した介護予防チェックリストをご覧ください。フレイルのリスク度を簡単に調べられるので、ご両親にリンクを送ってチェックしていただくことをお勧めします。

フレイルを予防するには?

 

フレイルは、一度その状態に陥ってしまったら終わりというわけではありません。軽度〜中度の初期段階であれば、その進行を緩やかにし、上の図のように健康な状態に戻すことができます。具体的には、運動、栄養、口腔ケアなどの生活習慣対策、社会参加によって、予防や改善が期待できるのです。

 

全国の自治体も、フレイル関連のパンフレットや動画などで予防方法を公開しています。効果的な運動方法などが紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。

■東京都内の介護予防・フレイル予防の取り組み

「身体的フレイル」はご本人の努力で予防や改善することもできますが、「精神・心理的フレイル」と「社会的フレイル」は家族や周りのサポートが必要です。私たち子世代ができることは、親と可能な限り連絡を取り、不安やストレスを軽減してあげること。

ひとたび要介護になってしまったら、月平均8.3万円ものお金が出ていき、その期間は平均して5年超というデータが出ています。できる限り健康寿命を伸ばすためにも、早い段階で周りがフレイルの兆候に気づき、対処しておきたいものです。


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

 


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