男性の生きづらさを軽減するのは社会の歪みを変えるため


絶え間ない競争に晒され、同質性が高く同調圧力の高い男性社会で、大半の男性は“負け組”になります。その劣等感や恨みの矛先は自身を負け組に追いやったシステムや強者男性に向かうことはなく、支配や暴力となってより弱い立場の女性や子供に向かいます。あるいは他者ではなく、自分自身に向かった結果、孤独に苦しみ、命を絶つことも。女性たちが100年以上かけて戦ってきた女性蔑視や女性差別、性暴力やDVをなくすためには、その源となっている既存の男性社会を変えることが不可欠です。

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私はそうした観点から、国際男性デーの取り組みは有効だと思っています。信頼していた身近な男性からの性加害の被害体験を持つ身としても、二人の息子たちには「有害な男らしさ」と言われる典型化された男性像に感化されて欲しくありません。

 

いわゆるマッチョな男らしさの押し付けや、生き方の選択肢の少なさに悩む「男性の生きづらさ」。その軽減への社会的な取り組みは、息子たちの豊かで幸福な人生と、彼らと関わる人たちの幸福を心から願う私にとっても、切実な問題です。

男性の生きづらさを軽減するのは、男を甘やかすことではありません。むしろ逆で、思考停止で競争社会に順応するのをやめ、自分の頭で考えて生きるように促すことです。他者と関わりを持ち、胸の内を言葉にして可視化し、自らその感情や思考を扱い、無知を認め、学び、変わり続ける勇気を持つのです。そして自分と他人を、ケアすること。一方的に尊敬を求めるのでなく、互いに敬意を払うこと。これはなかなかに手間のかかる、エネルギーを使う生き方です。弱い立場の人をいじめて、世間に文句を言いながらシステムに流される方が、幸せじゃなくても遥かに楽でしょう。