隠していた“母親の顔”が彼の心を掴んだ


現在のご主人とは、美月さんが事業拡大のために投資家と知り合う中で出会ったそう。ご主人もIT系の会社の年上の経営者でした。

「彼はとにかく仕事がデキる人。経営者としての才覚も実績もあり、歳も10歳近く離れているので、普段は人に甘えられない私も、つい頼りにしてしまって。何度か食事をするうちにすっかり私が好きになってしまったんです。遊び方もセンスのある人で、一緒にいるととにかく楽しくて……」

しかしこのとき、美月さんは離婚歴があり子持ちであることを公にしていませんでした。ご自身のカフェ経営などの仕事の兼ね合いもあり、プライベートを表に出すのは控えていたそう。

「仕事を通して知り合ったため、当初は私の状況を伏せる形になってしまいましたが、それくらいでちょうど良いと思いました。

というのも、彼の周りには明らかに女の子がたくさんいて派手な生活をしていたし、真剣な交際になることもなさそうで。私も離婚したばかりでバタバタしていて、もう結婚は懲り懲りという感じでした。でもこれまで大変だった分、彼とは割り切った関係で、たまに恋愛を楽しめばいいと考えていました」

離婚経験により、達観した恋愛感を身に付けたような美月さん。けれどこの状況から、まさか子連れでスピード婚に至るとは考えにくいですが、驚きの転機が訪れます。

「しばらくライトな関係が続いたとき、別れ際に気が緩んでつい『これから親のところへ息子を迎えにいく』と言ってしまったんです。彼は一瞬ポカンとしながら『あ、そうなんだ……』と驚いていました。ああ、物凄い引かれてしまった。もしかしたらこの関係も終わってしまうかもしれない。でも仕方ないか……と覚悟していたんですが、その後、彼から息子に会ってみたいと言われたんです」

 

「少し迷いましたが、断る理由もなかったので、3人で遊んでみることにしました。子育てとは無縁な人なので、単なる興味本位で息子を見てみたいのだと思っていましたが、彼は意外にも子どもの扱いが上手で。元夫とは家族でおでかけをしたこともほとんどなかったので、楽しい時間を過ごせたのは私も驚いたし、嬉しかったです」

 

この急展開にはただただ驚かされますが、これまでの経緯をすべて彼に明かした美月さんは、その後は息子さん連れで彼に会うことが増え、彼の方から子連れ旅行を提案されたりしたそうです。

「でも、この時も夫とはきちんと付き合っているわけでもありませんでした。ただ、『俺はこの子の父親になれるかな?』などボソッと呟くことはありましたが、その場の雰囲気で言ってるんだと流していて……そうしたら、突然プロポーズされたんです」

ご主人からのプロポーズは、美月さんにとっては完全に想定外のサプライズだったそうです。

普段と変わらないデートで外食を済ませたタイミングで、突然巨大な花束と小さな冊子が登場。それは手作りのフォトアルバムで、美月さんと息子さんの写真が並んでいました。そして添えてあるカードには、『美月たちと、幸せな家庭を築きたい。僕と結婚してください』の文字があったのだそうです。

「本当に信じられなかったけど、彼の愛が伝わって、本当に嬉しかった。少なくともしばらくは結婚しないと思っていたのに、感動で思わずYesと答えていました。

聞けば、これまで彼の周りにいたのは、ただ派手に夜遊びをする女性ばかり。最初は私もそうした女性の1人だったようですが、息子と過ごす母親の姿が彼に衝撃を与えたみたいです。それから私と家庭を持つことを真剣に考えるようになったと言っていました」

一般的に、シングルマザーの恋愛や再婚は簡単ではないと聞くことが多いですが、美月さんの場合は、女性としての印象、母親としての顔、そのギャップが彼の心を掴んだようです。純粋な母性に、男性は理屈を超えて惹かれることがあるのかもしれません。

しかしながら……。

いまだ元妻に執着する元ご主人に、完済されていない借金など、美月さんは複雑な事情を抱えたまま。結果的に、2人は世間に公にしないまま事実婚・別居婚をすることになります。

そして、これでハッピーエンドと思いきや……その後、ご主人の病的な浮気が判明するのです。最終話の後編では、浮気がバレた最悪な瞬間、さらに二度目の離婚を考えた末の美月さんの選択を語っていただきます。
 


写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
 

 

 

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