クリニックは診察時間内でも割増しに


医療費の明細をよくよく見ると、「再診(夜間・早朝等加算)」という項目に点数が記載されていたのです。気になって受付の方に聞くと、どうやらそれは土曜の午後に診ていただいたからのようです。金額的には500円、私は医療費の自己負担割合が3割なので実質支払うのは150円ですが、これまでずっと気持ち多めに医療費が取られていたわけです。

追加で払うのは微々たる額なので、その金額のために平日仕事を抜けて病院へ行くことは考えられませんが、今後のことを踏まえて少し調べてみることにしました。すると、けんぽれん(健康保険組合連合会)のWebサイトに「時間外加算」の項目が……! 医療機関によっては数千円になることもあり、微々たる額とも言っていられないことを知りました。

クリニックの土日診療は、週末しか休めない人たちのことを考慮して医療機関側が好意でやってくれているとばかり思っていました。金額はもちろん平日と変わらないと思っていましたし、コンビニと同じ感覚で病院に通える時代になったんだ、という印象でした。

今後、母親が時間外受診することが出てくるかもしれません。この辺りのことを詳しく教えていただけますか?

 


追加の加算がされるクリニックの時間帯


雅美さんがお気づきになったように、時間外診療には別途お金がかかります。タクシーが深夜早朝料金を設定しているのと同じように、医療機関も時間外の料金が発生するのです。

たとえば雅美さんは、今回土曜の午後にクリニックを受診したことで500円が加算されました。こちらのクリニックでは、土曜診療は午前と午後の二部制でやっていますが、加算されたのは午後の診察のみ。「診察時間内に行っているのに時間外診療ってどういうこと?」と思われる方もいるでしょう。実は、夜間・早朝・休日も診療しているクリニック(診療所)では、たとえ診察時間内であっても以下の時間帯は「時間外診療」にカウントされ、一律500円が加算されます。

 

雅美さんのかかりつけの皮膚科は20時まで診療しているため、これまで仕事帰りの19時過ぎに行くこともありました。その場合も、この上乗せ料金が発生していたのです。

 


病院における診察時間外の割増料金


これまで見てきたのはクリニック(診療所)のケースで、これが病院になるとまた決まりが変わってきます。そもそも病院と診療所には、以下のような違いがあります。

 

病院の場合、加算の区分には「時間外加算」「休日加算」「深夜加算」の3種類があり、加算額も以下のように異なります。さらに薬局でも割増料金がかかり、休日は調剤技術料の1.4倍、深夜は2倍が追加されます。下記の金額は保険適用前の額なので、6歳以上70歳未満の方と現役並み所得の高齢者は、このうち3割を負担すると考えてください。

※カッコ内は救急病院などの場合の金額です。

 

加算料金が上乗せされる背景


さまざまな事情の患者が受診しやすい時間帯に開業する診療所を増やす狙いもあって、国は時間外加算を設定しています。いわばオプションのようなイメージかもしれません。

雅美さんのように仕事や親の介護が優先で、残りの時間で自分のことをやりくりするような場合は、平日の夜や土日に診療してくれる病院はとても助かります。その一方で、夜間・休日の時間外外来は、緊急を要する重症患者への対応に支障をきたしているという現実も。また、休日や夜間はスタッフを減らして医療体制を縮小しているので、日中と同等の医療を受けることが難しい場合もあります。

それらの背景を知った上で、余裕がある方は医療費節約のためにも平日の18時まで、土曜の受診も午前中のうちに済ませてみてはいかがでしょうか。


イラスト/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

 


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