“茶碗をどうするか”から始まり、飲み会での会話もセリフに。パズルしながら組み立てられた脚本に脱帽


佐々木さんが作陶を習っている先生は前編にも登場した陶芸家・檀上尚亮さんです。「先生は“佐輔は自分の分身”というほど、入れ込んでいるんです」と今井さん。

今井:佐輔という人物像をつくるときに檀上先生にアイデアをたくさんいただいたんです。それまで私がイメージしていた陶芸家は寡黙で、土とずっと向き合ってて、不機嫌なイメージだったんですけど、「陶芸家って結構アウトドアな人多いよ」などの知られざる生態を色々教えてくださって。もうひとつ、私が持っていた陶芸に関する勘違いというのがあって、私は「写し=贋作」と思っていたのですが、「陶芸は写しから入るものだから、写しは決して悪いことじゃないんだよ」と。だから、蔵之介さんが演じる佐輔は写しがとても上手いのですが、それはイコール、ウデが良いということなんです。

佐々木:写しが上手すぎるがゆえに、自分の作品を贋物として売られてという過去を持っているんですよね。『嘘八百』の場合、脚本のとっかかりはどこからつくるんですか?

 

今井:毎回、まずは“茶碗をどうするか”から始まります。今回の「鳳凰」は一作目から色々とご相談に乗ってもらっていた堺市博物館学芸員の矢内一磨さんにお知恵をいただきました。ちょうど2020年から21年にかけて占星術的に土の時代から風の時代へと移ったというのもあり、“波動”アートを絡ませることにしたのですが、「鳳凰」も幻の鳥なので、通じるものがあります。どんなお茶碗になるかは、矢内さんからあるキーワードが出てきて……と、これ以上はネタバレになるので伏せておきますが、何というか奇跡的に、ちょうど檀上先生の作風と合致したんです。

佐々木:僕は台本が出来て、その檀上先生と、陶芸家ならどう考え行動しますか? みたいな話をしながら、じゃあ、今井さんとメシでも食おうかって。

 

今井:蔵之介さんのお話からアイデアがどんどん膨らんで、本当に良かったと思います。

佐々木:あのとき話したこともセリフに反映してくださって、作家さんってこういうふうに脚本をつくっていくんやなって、あのとき改めて感じました。ひとつのアイデアに固執するわけでなく、いろんなところからいろんな話を持ってきて、アイデアをパズルのように組み合わせて、またそれを深めていく……。そういうところを身近で感じられたのも、三作目をつくるチカラになったと思います。本当にありがとうございました!

今井:いえいえ。こちらこそ。今回はお声がけいただき、本当に嬉しかったです。

佐々木:これからもどうぞよろしくお願いします。まずは、この『嘘八百 なにわ夢の陣』がヒットすることを祈らないと(笑)。

前編
【佐々木蔵之介×脚本家・今井雅子】「“ダメ出しを貰える役者”でいなきゃアカン」大ヒットシリーズ3作目にして築いた信頼>>

<映画紹介>
『嘘八百 なにわ夢の陣』
配給:ギャガ株式会社
2023年1月6日 全国ロードショー

監督
武正晴

出演
中井貴一 佐々木蔵之介
安田章大 中村ゆり 友近 森川葵
前野朋哉 宇野祥平 塚地武雅 吹越満 松尾諭
酒井敏也 桂雀々 山田雅人 土平ドンペイ Blake Crawford 高田聖子
麿赤兒 芦屋小雁 / 升毅 / 笹野高史


撮影/shitomichi
ヘア&メイク/晋一朗(佐々木さん)、
田中陽子(今井さん)
スタイリスト/勝見宜人(佐々木さん)
取材・文/前田美保
構成/坂口彩