社会の「空気作り」に参加する

 

参加者から、「ハラスメントに遭いやすい人は強く見せたほうがいいのか?」という質問が出たときの柚木さんの答えがとても印象的でした。

柚木さんが強調したのは、「第三者が声を上げること」の重要性。

ハラスメントに遭っている時って、固まってしまうし、すごく怖いですよね。とっさに抵抗したり、注意したりってめちゃくちゃハードルが高いと思うのです。そんな時、そこに居合わせた人が、間に入ってくれたら……。そう、やっぱり、傍観者にならず、社会全体で「ハラスメントを許さない」という空気作りが必要なんだと思います。

痴漢の被害でも、居合わせた人が追いかけて捕まえてくれたなんて素晴らしい話を聞く一方、誰も助けてくれなかった、ほとんどの人は助けを求めても目を合わせてくれなかった、という体験談もたくさん聞きます。

傍観することで、直接受けた被害と、周囲が傍観者側に回ったという事実と、被害当事者には二重の苦しみを与えてしまうと思うんです。

 

「傍観者」から「目を光らせる第三者」に


実際、柚木さんは相次ぐ映画界の性暴力報道を受け、映画化された作品の原作者で結束し、「原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」という声明を出しました。

それも、「当事者だけに背負わせない」という思いが根底にあっての行動だったといいます。
すでに相当な負担を強いられている当事者ではなく、問題に直接関係のない第三者が、たとえ小さくてもいいから何かアクションを起こす。こういう意識が広がれば、ハラッサーの動きを鈍らせることができるのではないでしょうか。「傍観者」が「目を光らせる第三者」に変われば、社会全体でハラスメントが起きないよう見張る体制ができる、と思うのです。

筆者も派遣時代に、派遣先のほかの社員さんたちは、筆者が明らかにお客さんから絡まれていても、見て見ぬふりをしました。あの時、誰か一人でも、「どうしたの?」と声をかけてくれる人がいたら……とふと思ったりします。