「女性管理職30%」本当に、死に物狂いで実現させようとしているか?


とある組織では、指導的役割の女性が少ないために国際競争力がえらく低いことに気がつきました。これじゃいかんと掲げた目標が「2030年までに、指導的役割に占める女性の割合を20%に増やす!!」。それは……少なくないですか。意思決定に影響を与えるクリティカル・マスと言われる30%を目指さないと。「でもこれが現実的な数字です。今は一桁ですから。30なんて実現不可能な数字を掲げても、絵に描いた餅で終わってしまうだけ!」となぜか胸を張るトップ。日本社会の各所で見られる光景です。

写真:Shutterstock

かつて人気を博したドキュメンタリー番組『プロジェクトX』では、一見実現不可能な目標に死に物狂いで取り組んで、見事達成する日本の働く男たちのストーリーが多くの人々の胸を打ちました。なのになぜ、雇用や賃金の男女格差をなくし、女性の登用を増やすジェンダー平等プロジェクトでは、その偉大な情熱と才能が発揮されないのでしょうか。

 

2003年に政府が掲げた、2020年までに指導的立場にある女性の割合を30%にする「202030目標」。結局17年たっても目標は達成されず、コロナ禍の最中にぬるっと先送りされて「2020年代のなるべく早い時期に指導的立場の女性を30%にする」ことに。2022年7月時点の企業における女性管理職割合は、過去最高の平均9.4%。まだ一桁台です。一方、役員全員が男性の企業は53.5%(いずれも帝国データバンク調べ)。女性幹部3割達成には、なぜこんなに時間がかかるのか。構造が変わらないからです。働く女性が増えたと言っても低賃金の非正規雇用が多く、経済的自立は簡単ではありません。議会にも企業幹部にも女性は増えない。自分自身は変わりたくないけど、努力している素振りはアピールしたい。そんな意思決定層の本音が透けて見えます。

ドーナツ型女性起用も気になります。例えばテレビ局。2022年6月の調査では、在京・在阪のテレビ局で、主要部門であるコンテンツ制作部門(報道・情報・制作・スポーツ)の最高責任者に女性は0。女性の起用は周縁の部門で、組織を横から見れば男性と肩を並べる女性の数が増えているけど、上から見るとぽっかりと中心部に穴の空いたドーナツ型。あなたの会社ではどうですか。主要な部門では男性がトップを占めていませんか。

果たして30%目標は、奇跡の駆け込み達成を果たせるのでしょうか。『ジェンダー平等プロジェクトX』は本気なのか。劇的変化を遂げるべきは、女性たちではありません。女性はずっと前から、頑張って変化し続けています。今度は、悩む女性を他人事のように眺めている人たちの番です。
 

 


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