体温は高い方がいいの?それとも、低い方がいい?


編集:どちらもよく聞こえます……。

山田:そうですよね。仮説レベルでは、どちらもよく聞こえます。仮に、体温を0.5度上げたり下げたりすることが可能であれば、それぞれに介入し、どちらが病気になりやすいかを研究すれば、証明はできるかもしれません。ただ、現時点ではそのような研究で何か健康上のメリットが証明されているわけではありません。「体温を上げる方がいい」ことを売りにした本を書きたい方は、そうした理論・仮説ばかりをたくさん集めますし、逆に「体温を下げる方がいい」という仮説を持っている方は、そうした理論ばかりを集め、記事や書籍にする、という状況なのではないでしょうか。

編集:今まで、仮説レベルの健康法を鵜呑みにしすぎていたかもしれません。その根拠といえば、電車内で「体温が高い方が健康!」と謳う書籍の広告をちらっと見ただけなのですが、しっかりと頭の中にインプットされていました。

 

山田:繰り返しになりますが、人間の体は、自分の適切な体温を維持するために、脳から始まり、甲状腺などの臓器を使って、厳格なコントロールをしています。「体温を上げる方法」などのように、健康法として謳われている情報には、十分な根拠がない話が多い、と捉えていただくのがよいのではないでしょうか。

熱を測って、36度前後だということ自体が、健康を示す兆候のひとつです。36.3度と36.7度で、「何か差がありますか?」と聞かれれば、厳密な答えは「わからない」あるいは現時点の医学的な常識は「どちらでも良い」ということになります。

産後すぐの赤ちゃんは例外ですが、大人であれば、体温が前日よりも少し低いからといって、ぜひ落ち込まないでください。正常範囲内での変動というのは決して悪いことではなく、午前中は低く、午後に体温が少し上昇するなどのように体温は1日の中でも少しずつ変動しています。熱が38度でなかったということが、いいことなのです。

編集:とてもよく理解できました! 引き続き冷えの対策は続けますが、正常範囲内での体温の差には、一喜一憂しないようにします。本日も、ありがとうございました!

 

<新刊紹介> 発売中!
『健康の大疑問』

著:山田悠史
定価:本体1100円
発売:2023.01.26
マガジンハウス


Amazonはこちら
楽天ブックスはこちら

NY在住・新進気鋭の専門医が、最新の知見を駆使し、健康情報の真偽を問う。
健康常識をアップデートせよ

白髪の原因はストレス?
腸内細菌が認知機能を高める?
痛風にプリン体制限は有効?
高血圧の薬は一生飲み続けてOK?
ウォーキングは1日何歩までがベスト?
次世代エイジングケア
NMNサプリの正体とは?
若者の大腸がんが急増している本当の理由とは?
乳酸菌は風邪予防になる?
断食で長生きが可能となる?
グルコサミンは変形性膝関節症の痛みを改善する?
ビタミンDで骨は強くなる?
音楽が健康に及ぼす影響とは? ……etc.



構成/新里百合子
 

 


山田悠史先生のポッドキャスト
「医者のいらないラジオ」


山田先生がニューヨークから音声で健康・医療情報をお届けしています。 
以下の各種プラットフォームで配信中(無料)です。
ぜひフォローしてみてくださいね。


Spotify
Google Podcasts
Apple Podcasts
Anchor
Voicy


リクエスト募集中!

ポッドキャストで話してほしいテーマ、先生への質問を募集しています。
番組へのご感想や先生へのメッセージもお待ちしております。
以下の「応募する」ボタンから気軽にご応募くださいね!

応募する

 

前回記事「「クロスワードパズル」で認知症が改善!脳トレと認知機能の関係は?【医師の解説】」はこちら>>