解決策はないのか? 東京都の事例


今からでも、就職氷河期世代の雇用問題を解決するには、一体どうしたらいいのか。小林さんは東京都の独自の就職支援事業「東京しごと塾」にそのヒントが見えるといいます。

「東京しごと塾」は、ビジネスマナー、応募書類の作成、面接の練習などを行ったうえでグループを組み、東京しごと塾があらかじめ協力要請した企業にアポイントをとって訪問していくというもの。「会社の特徴などをヒアリングして、訪問企業をどうPRするか企画会議を重ね、最終日は企業の担当者を招いてプレゼンテーションを行う。グループワークを通して塾という“仮想職場”で“働く”体験をする」のだそう。

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対象は30〜54歳の非正規社員で、受講期間の2ヵ月間は都から日額5000円の就活支援金が支給されるほか、受講後3ヵ月の就職支援と定着支援がつくなど手厚いサポートも。さらに、ジョブトレーナーがきめ細やかなキャリアカウンセリングを行うことで、自分の強みを発見することにもつながっているといいます。

 

「東京しごと塾の初年度2015年度の受講生は205人、86人が就職したうち、正社員が45人だった。直近ではコロナの影響を受けつつも採用状況は堅調で、2021年度の受講生は117人、90人が就職して55人が正社員になって卒業した」と、その成果も表れ始めています。

本書ではこのほかにも、就職氷河期世代への支援にとどまらない中長期的な取り組みを行う富山県の事例や、「これからの世代」が雇用への不安感を払拭するために注目したい、良質な雇用を生み出せる付加価値の高い製造業、工業高校や国立高等専門学校などの良さに着眼。

「これまで外国人旅行客を狙ったインバウンド政策に安易に頼ったツケが回り、多くのコロナ解雇につながった。今こそ、産業構造の転換が迫られている。それには、薄利多売のサービス・飲食業から、高付加価値のものづくりへの原点回帰が必要なのではないだろうか」と小林さんは考えます。