「幸せなキャリア」か「不幸なキャリア」か、決めるのは自分
の心の中のモノサシ


――なんだか「キャリア」という言葉のイメージが変わってきました! (キラキラした何か」ではないのですね)。では、「キャリア」を考えることは、なぜいま私たちに必要なのでしょうか。

高橋:人々が物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを求めるようになったからです。1990年代までは、会社員であれば会社が示したキャリアパスやキャリアモデルに倣って、いわばキャリアのはしごを上っていくことが「キャリア形成」であり「職業人生」でした。そして、頑張ってキャリアのはしごを上っていけば欲しいものが手に入り、豊かになれる、幸せになれる時代だったのです。

しかし、いま私たちが求める精神的な豊かさのモノサシは、一人ひとりの心の中にあります。キャリアモデルに倣って働いたからといって満たされるものではないのです。これは多くのキャリアの専門家が言っていることですが、キャリアに勝ち負けはありません。あるのは、「幸せなキャリア」と「不幸なキャリア」です。誰だって、「幸せなキャリア」を形成したいですよね。

また、終身雇用制度は崩壊し始めており、会社が最後まで“社員の面倒を見る”ことが難しくなっています。さらに、結婚や子育て、介護など、キャリア形成に影響を与えるライフイベントが多様化し極めて個別性が高く、しかも予想ができなくなっています。ビジネスの環境も予想できない、自分自身のライフイベント予想できない中、私たちは自分でキャリアを切り開くしかなくなってきたのです。

これが、自分のキャリアと向き合い、自分らしいキャリア、幸せなキャリアを自ら切り開いていくことが求められるようになった背景です。

写真:Shutterstock


「何が自分をドライブさせるか」を知って、「幸せなキャリア」に近づく


――では、「幸せなキャリア」を築くために大切なことは何なのでしょうか。

高橋:まずは、自己理解ですね。そこで大切なのは、「自分は何が好きなのか」「何の仕事がしたいのか」ではなく、「何が自分をドライブさせるか」ということです。言い換えると、「何が動機となるか」「何がモチベーションとなるか」であり、自分の内にある本質的な欲求から生まれる内的動機です。

写真:Shutterstock

キャリアの幸せだけでなく、多くの幸せの源泉は「動機」です。自分の動機と仕事への取り組み方や能力の発揮の仕方とに相違があると、たとえ好きなことを仕事にしていてもやりがいがなかったり、自分らしく働いたりすることはできません。それどころか、動機がない過剰な努力はバーンアウトを招いてしまいます。ですから、「好きなこと」「憧れの仕事」が「自分に向いている仕事」であるとは限らないのです。

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「好きなこと」が「自分に向いている仕事」とは限らない! なんだかショッキングな言葉です。次回は、それが具体的にはどのようなことなのか、そして「幸せなキャリア」を築くために必要なことは何なのか、深掘りします。


文/吉澤穂波

 
 
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