老化に保護的に働く因子とは?


山田:ちなみに、老化に保護的に働いていた因子として、「教育」と「世帯収入」の2つが報告されています。

 

編集:この結果も、納得感がありますね。

山田:そうですね。イギリスの大規模研究でも、「世帯収入」と「健康」についてはその関連性が報告されています。世帯収入が下がってしまうと、どうしても食生活に大きな影響を及ぼします。たとえばこちらアメリカでは、世帯収入の低下が、冷凍食品や加工食品の摂取増加に関連するということは、よく知られています。加工食品が及ぼす健康への影響が、老化を加速しうるので、逆に言えば世帯収入の高さが、老化に保護的に働くと言える、ということかもしれませんね。

編集:冷凍食品、加工食品は便利なので私も買うことがありますが、バランスを考えたいな、と思いました。

山田:もう一つの「教育」は、認知症の修正可能なリスクとしてもよく知られています。「教育」「世帯収入」「子ども時代の肥満」……。これら老化と関連する因子を見ると、大人になってから自分の意識で気をつければいいことだけでなく、親の影響、生まれた環境なども、私たちの老化に少しずつ影響を及ぼしている、ということがわかりますよね。

こうしたカテゴリーの話は、SDH(健康の社会的決定要因)と言われています。健康というのはそもそも、社会的な要因によっても決定づけられてしまう、ということですね。

今回ご紹介した研究は、社会的なところにまで目を向けなければ、本当の意味で社会に生きる人たちの健康を支えるのは難しい、ということを教えてくれたのではないかな、と思います。

編集:今後も健康な生活を送るために、喫煙や飲酒、肥満にはやはり気をつけたいなと思いました。また、新たな視点で老化と健康について考えるきっかけにもなりました。ありがとうございました!
 

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構成/新里百合子
 

 


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