物語の鍵を握るキャラクターの一人が、山戸四葉の同級生・郷田実亜子(ミャーコ)。よくモテて恋愛体質、浮気癖もある。裕福な育ちで、真央に度々酒を奢る。酒癖が悪く、自由奔放な性格だが、放っておけない憎めなさがある。ミャーコとの出会いで真央は山戸家に起きた事件の真相を知っていく。

——ミャーコというキャラクターがすごく奔放で、どうしても気になってしまいます。ミャーコは同性愛者ですが、性的マイノリティというとどうしても悲劇的に描かれやすいと思うんです。真央も最初はミャーコを属性で見て可哀そうな人なのかな? って思うけど、あまりにやりたい放題な姿を見て、だんだん先入観が解けていくんですよね。

 

柚木:ミャーコはめっちゃ恋愛するし、ひとりの人とうまくいくと、このまま行くのは嫌だなと思って浮気しちゃう。でも、異性愛者のキャラだと男女問わずよくいるタイプですよね。

物語の中の性的マイノリティって、主人公たちが幸せになるように動いていくというのが非常に多い。でも、だからこそこの物語ではそうならず、ミャーコは全く役に立たず、むしろ邪魔をするというのを最初から考えていました。自分のことだけずっと考えて、最初から最後まで反省することなく、いいところを持っていく、そして、長生きをする。そんな性的マイノリティを描きたかったんです。

 

——ある意味、性的マイノリティのお決まりの描かれ方を、全部ひっくり返すような存在です。

柚木:ミャーコはばぁさんになってもあそこに住み続け、ちょっとやなことがあったら膨れて周りになんとかしてもらおうとする。それを繰り返していってもらいたい。いい加減な、愛がなにかもわからないミャーコが、同性愛がやっと法律で認められた世界で結婚して。でも結婚を大切にできない。でも、異性愛者はみんなやってることですよね。ノリで結婚してノリで別れちゃう、みたいな。そういうことをミャーコに全部やらせてあげたいなって思ったんです。

アメリカの作品とかだとLGBTの描かれ方がすごく進んでいて、LGBT間のDVやモラハラも登場するんです。最初はすごくびっくりしたんですけど、異性愛でもいろいろ起きるんだからLGBTでもあるのは当たり前。なのに、どこかで排除していたんだと思います。

ミャーコは誰がみてもいい加減なやつに見えるように頑張りました。この人本当はいい人なんじゃないかとか、本当は傷があってあえて一人の人を愛せないのね、ってうっとりされないように。今日もめっちゃ寝ていて、ごはんをいっぱい食べてて、とにかくゴロゴロしている。